日教組が働き方改革巡りシンポ 給特法の廃止など求める

日教組が働き方改革巡りシンポ 給特法の廃止など求める
パネルディスカッションで自身の体験を語る教員たち=撮影:大久保昂
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 教員の「働き方改革」の実現に向け、日本教職員組合(日教組)は1月20日、東京都千代田区の日本教育会館など全国約40カ所の会場でシンポジウムを開いた。組合員を中心に約5000人が参加。オンラインで各会場をつなぎ、各地の取り組みを共有したり、意見交換したりした。参加者からは、給特法の廃止や抜本的な見直しを通じ、労働時間に応じて残業代を支給する労働基準法の仕組みを公立学校教員にも適用するよう求める声が上がった。

 教員の負担軽減や待遇改善については、中教審の特別部会で議論が続いており、給特法の在り方を含め、今年春ごろに改革の方向性が示される見通しだ。これに関連し、日教組は少人数学級の実現や学習指導要領の内容削減、給特法の廃止・抜本的見直しなどを盛り込んだ提言をまとめ、賛同者の署名を募っている。シンポジウムの冒頭であいさつした瀧本司中央執行委員長は「中教審には校長先生の代表もいるかもしれないが、現場の代表はいない。だからこそ、今ここで声を上げなければいけない」と述べた。

 その後、パネルディスカッションが開かれ、全国から東京の会場に集まった4人の教員がパネリストとして登壇。それぞれの体験に基づき、働き方改革の必要性を訴えた。

 養護教諭の内田恵理さんは、勤務校に養護教諭が1人しかいないため、子どもの話をじっくりと聞く時間を取れなかったり、休暇を取得しづらかったりする現状を報告。小学校では児童数が851人以上の学校に養護教諭を複数配置すると定めた国の基準について、「実際には300人でも複数配置が必要な学校はある」と述べ、実情に見合っていないのではないかと指摘した。小学校教員の大塚智子さんは、不妊治療を続けながら病院の待合室でも仕事をしていた日々を振り返り、「この仕事はやりがいがある。でも、仕事を優先するあまり、自分の人生がおろそかになってはいないか」と問題提起した。

 5人の子どもを育てながら小学校教員をしている向山潤さんは、仕事と家庭の両立の難しさを打ち明け、「この危ういバランスが崩れかけた時には『退職』という言葉が家庭内で飛んでいる。そうならないように、一刻も早く働き方改革を実現してほしい」と語った。岩手県立高校教員の千葉律子さんは、地元開催の国民体育大会でソフトボール競技の監督を務めていた時期に体調を崩したという。こうした体験に基づき、日本のスポーツの在り方について「全て教員が担っている現状を変えていく必要がある」と訴えた。

 続いて、文部科学省の元官僚で明星大名誉教授の樋口修資氏が「学校における働き方改革の最前線を検証する」と題して講演。当面の課題として、▽学校や教員が担う業務の大胆な見直しと削減▽教職員定数の改善▽教員業務支援員や部活動指導員などの外部支援スタッフの配置充実▽勤務時間管理の適正化と給特法の抜本的見直し――の4つを挙げた。

働き方改革の課題について講演する樋口氏=撮影:大久保昂
働き方改革の課題について講演する樋口氏=撮影:大久保昂

 給特法の見直しを巡っては、自民党が昨年5月、残業代を支払わない代わりに勤務時間の内外を包括的に評価して支給する「教職調整額」を増額するよう提案している。この案について樋口氏は、「長時間勤務の抑制措置とはならない」と批判。公立校の教員についても、民間企業の労働者などと同じように、労働時間に応じた残業代を支給する制度に改めるよう求めた。

 また、教員の受け持ち授業数(持ちコマ数)の軽減などを目的として文科省が推進している小学校高学年の教科担任制について、「高学年の学級担任のみの軽減では不十分」と指摘。義務標準法を抜本的に改正して持ちコマ数に上限を設け、教職員定数を改善することが不可欠との認識を示した。

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