年度当初の教員不足「対応遅れの教委には指導助言」 盛山文科相

年度当初の教員不足「対応遅れの教委には指導助言」 盛山文科相
閣議後会見で質疑に応じる盛山文科相
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 2024年度当初の教員不足の解消に向け、文部科学省が都道府県と政令市の教育委員会にそれぞれの取り組み状況について回答を求める通知を出したことを受け、盛山正仁文科相は1月26日の閣議後会見で、「対応の遅れが懸念される教育委員会に対しては、必要な指導助言を行う」と述べ、教員の人材確保に向けた取り組みを強化する必要を改めて強調した。文科省は1月23日付の通知で、具体的な施策の内容や確保できる人員数といった見込まれる効果などを、2月22日までに回答するよう求めている。

 盛山文科相は、1月23日にオンラインで行った都道府県と政令市の教育長会議で、「特に教師不足への対応について、子供たちのために十分な指導体制を整えるのは私たち大人の責任であるという認識の下、教師人材の確保に向けた取り組みの強化をお願いした」と指摘。教員不足の解消に向け、各教委に「具体的にどのような見通しを持って取り組む計画なのか、見込まれる効果も含め、状況の把握を行う」ことを目的に取り組み状況の調査を依頼したことを説明した。

 その上で、対応の遅れが懸念される教育委員会に対し、「国の補助事業の活用や他の自治体の先導的な取り組みの導入など、必要な指導助言を行う」との考えを表明した。

 1月23日の教育長会議の席上、盛山文科相は「『数年後には採用倍率が改善して、教師不足も解消に向かうだろう』という楽観的な意見も耳にする」と述べ、少子化の進行に合わせて、教員不足は数年後に自然解消されるとの見方が一部の教育委員会にあるとして、こうした楽観的な見方に強い懸念を示した。

 こうした懸念の背景には、教員採用の権限を持つ都道府県・政令市の教育委員会が、現時点で教員不足の状況があるにもかかわらず、今後の教員採用人数を減らしていく可能性がある、との調査結果がある。文科省が各教委に教員採用計画の聞き取り調査を行い、その人数を積み上げたところ、公立学校教員の採用者数は、23年度が小学校1万7034人、中学校9589人でそれぞれピークとなり、その後は緩やかに減り、30年度には小学校1万1258人、中学校6520人まで減少する見通しとなっている=グラフ

小・中学校教員の採用者数の推移と見通し
小・中学校教員の採用者数の推移と見通し

 このため、盛山文科相は教育長会議で「子供たちはこの1年の間にも成長し、進級進学する。子供にとってはかけがえのない1年であり、十分な指導体制を整えることは、私たち大人の責任。今の子供たちの教育環境がおろそかになっている地域や国であっては、明るい未来が見えてくるものではない」と述べ、大人の責任として現時点での十分な指導体制を整える必要があることを強調した。

 また、中教審が22年12月の答申で打ち出した「多様な専門性を有する質の高い教職員集団」につなげるため、23年度補正予算に計上した「大学や経済界と連携して教員人材を確保するための補助事業」の活用や、特別免許状を活用した「民間企業からの学校現場への任期付き派遣」など、新しい領域に踏み込んで教員人材の発掘を促している。

 盛山文科相が言及した、対応の遅れが懸念される教育委員会への「必要な指導助言」には、こうした施策の取り組みも念頭に置かれているとみられる。

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