いじめ重大事態の調査に関する指針の改定に向けた議論を進めている文部科学省の「いじめ防止対策協議会」が2月1日、オンラインで開催され、重大事態調査の課題などについて議論した。児童生徒や教員などの聞き取り調査に入る前に、秘匿性や匿名性などを担保するなど前提条件を明確にし、証言の確度や信頼性を高めることが必要だとの意見が相次いだ。
同協議会は指針の改定に向け、①重大事態調査の在り方②調査組織の在り方や調査の進め方③重大事態調査の標準的な調査事項④調査結果の説明および公表、再調査――の4項目について論点整理を進めている。この日の会合では、③と④が議題だったが、委員からは調査事項などを検討する以前に、児童生徒や教員を含む関係者に向けて調査の前提条件や方向性を明確にするべきだという意見が相次いだ。
現行のガイドラインでは、聞き取り調査は関係者の任意の協力を前提としており、証言者の匿名性を担保する方法などは明記されていない。このため、集まる証言が限られるなどの課題が指摘されている。
渡辺弘司委員(日本医師会常任理事)は「(証言者の)秘匿性や独立性、非懲罰性も担保されていない。発言者が(自分にとって)不利な情報だと思った場合は話す必要がないと判断することもある」と指摘。その上で「どういうスタンスで証言を聞くかを明確にし、関係者に提示した上で証言を集めなければ、調査委員会が基にする情報の信頼性がなくなってしまうのではないかと危惧する」と述べた。
玉井康之委員(北海道教育大学副学長)は、調査が結論ありきで進んだり、因果関係がはっきりしない方向性に結論付けられたりするなど、重大事態の調査が抱えている課題について言及。「調査に限界があることや、難しさについてもガイドラインに盛り込んでいただけるとありがたい」と注文を付けた。