今年も受験シーズンが終わり、新年度を迎えようとしている。この時期になると思い出すことがある。自分の大学受験の時のことだ。
不合格が続き、残るは最後の一校。午前の試験を終え昼食の時間になった。キャンパスに出て昼食にしようと母親が作ってくれた弁当箱を開けた。白飯の上に海苔で形作られた「がんばって」の文字が目に飛び込んできた。母親の精一杯のエールだったのだろう。思わず目頭が熱くなった。
今年、大学入学共通テストを前に、能登半島地震で被災した高校生が気丈にも「ここまで来たらやるしかない」「これまでの成果を全力で出し切りたい」と言っていた姿が印象に残っている。避難所で生活していたり、親元を離れ集団避難を余儀なくされたりしている中学生も多く存在する。自宅を失い、家族や肉親を失い、追い込みもままならず、不安を抱え、精神的にも不安定な状態で受験に臨んだ受験生も多かったはずである。
石川県では、避難している生徒向けの試験会場が設置されたり、被災した高校では別の学校を会場にしたり、一部の高校は面接をとりやめたりしたという。できる限りの配慮だったと思う。ただ、私が受験した時とは比べようもない過酷な状況の中での受験だったことに変わりはない。
被災した受験生が、「あの時は大変だった。でも…」と前向きに振り返ることができるようになることを祈るばかりである。受験生を第一に考え、さまざまな対応をして来られた方々、生徒たちを励まし支えて来られた方々に心から感謝申し上げたい。