「よく決断」「意義の対話を」 中学校クラス分けやり直しへの意見

「よく決断」「意義の対話を」 中学校クラス分けやり直しへの意見
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 滋賀県守山市立守山南中学校(北川清司校長、生徒1101人)で4月5日、新3年生381人に対して新年度のクラス分けを発表したところ、配慮が足りなかったケースがあったとして、学校側はクラス分けのやり直しをすることを決めた。当初、10日には新たなクラス分けを発表予定だったが、同市教育委員会への教育新聞の取材で「全ての生徒の不安な気持ちに寄り添っており、もう少し確認作業に時間がかかる」と、発表が先延ばしになっていることが分かった。

 同校では4月5日、新3年生が入学式準備などのために登校し、その際に新年度の11クラスのクラス分けを発表した。ところが、人間関係に問題がある生徒同士を同じクラスにしていたことが保護者からの指摘で分かり、市教委とも相談の上、クラス分けをやり直すこととした。4月8日に予定していた始業式は、新3年生は臨時休校とし、保護者説明会を実施。翌9日には3年生の学年集会も実施し、学校側が今回の経緯などについて説明した。

 当初は10日に新たなクラス分けを発表予定だったが、生徒への心のケアが必要との判断で、新3年生に新しいクラスや学年に対しての不安や心配などについて聞き取りをしたところ、新たな事案などが出てきており、市教委は「10日以降も学校側でより丁寧な確認作業を進めている状況」とし、クラス分けの発表には「もう少し時間がかかる。近日中には速やかに発表予定」と説明した。

 今回の事態について、元横浜市立中学校校長の齋藤浩司氏は「理由はともかく、批判も出るし、混乱することも分かった上で、覚悟を持ってクラス分けをやり直すことをよく決断したと思う」と率直な感想を話す。一方で、「人間関係が要因であるということが明らかになったので、生徒たちにはどうしてもモヤモヤが残ってしまうのではないか」と懸念を示す。

 「各校では早ければ2月から次年度の学級編制作業を行っている。やり方に関してはそれぞれだが、こうした事態にならないように、かなりの時間をかけて作業してきているはずだ。新たなクラス分けが発表後は、学校が総力を挙げて子どもたちの支援に取り組んでほしいし、保護者や地域など周りの大人たちも、子どもたちのことを考え、一丸となって支えていけることを願う」と話す。

 関東の公立中学校の元教員は「一番難しいのは、小学校低学年や中学年でトラブルがあった場合。高学年でのトラブルは中学校にも引き継がれるが、それに沿って中学校のクラス分けをしても、ふたを開けると『実は小学3年生の時にこんなトラブルがあって…』となることもある」と中学校のクラス分けの難しさを話す。

 「中学校では基本的には学力ベースでクラス分けをしていく。いじめなどの事案については生徒や保護者の要望に沿うが、1年間見てきた教員が大丈夫そうだと判断するような要望については、配慮しないことも多い。学力ベースで組んでいき、離さなければいけない生徒は離して、そこには同じ学力レベルの生徒を入れていくようなパターンが多いのではないか」と説明する。

 そして「実は学校規模が小さい方が、クラス分けは難しい。今回の学校のように11クラスともなると、人間関係の配慮はしやすい。今回の事案ではどこかで見落としがあったのだと思うが、学年主任や生徒指導担当の異動などがあると見落としが起きやすくなるので注意が必要だ」と指摘する。

 また、東京都内の公立小学校の教員は「今回のケースは特別な事情があったとは思うが」と前置きした上で、「そもそもクラス替えは何のためにやるかということを、小さい頃から学校が保護者に伝えられていなかったことも原因の一つではないか。クラス替えは人間関係を築く力を身に付けるために行っていて、自分に合う子も合わない子もいることを知るためにやっている」と話す。

 小学校でも3学期になると希望者のみの個人面談などで保護者から「あの子とは来年度はクラスを離してほしい」などの要望が寄せられるという。「もちろん配慮しなければいけない事案はあるが、最近は保護者の要望を聞き過ぎたり、寄り添い過ぎたりしていないか。教育の芯になる部分を保護者に理解してもらわないままに、保護者の言いなりになってしまったところがある」と学校現場の現状を指摘する。

 今回の事態について、自校でも対応を考えたいと話し、「例えば、『言えばクラス分けを変えられるのではないか』といったケースが増えないためにも、これから始まる各学年での保護者会で、保護者にこのことをどう思うか問い、本来のクラス替えの意義などについても対話していく必要があるのではないか」と考えを述べた。

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