学校風土がどんな要素によって構成されているのかについて、世界の研究でより明らかにされていることは前回説明しました。今回は学校風土が何なのか、代表的な考えを紹介していきたいと思います。
まず、アメリカのニューヨークに本部を置くNational School Climate Centerでは、学校風土の要素を「安全」「教えと学び」「人間関係」「環境と位置付け」「教職員」の5つに分けて説明しています。
安全:学校におけるルール。身体的な安全、心理的安全、ネット上における安全の感覚。
教えと学び:教科学習(授業)における支援的な雰囲気、励まし。社会性や感情コントロールのスキルや態度に関する学び。
人間関係:多様性を認める考え、教師と子どもの関係性、子ども同士の関係性。
環境と位置付け:物理的な環境、地域や人々に開かれた学校の在り方。
教職員:学校の管理体制、教員同士の協力的態度。
また、同じくアメリカの団体になりますが、National Center on Safe Supportive Learning Environmentsでは、学校風土を「エンゲージメント」「安全」「環境」の3つの要素に分けています。
エンゲージメント:行動的(安定的な出席など)、感情的(学校が好きなど)、認知的(良い成績のための努力など)な学校との心理的つながり。
安全:児童生徒が暴力、いじめ、嫌がらせ、薬物使用などの影響から守られていること。
環境:適切な施設、適切に管理された教室、利用可能な学校ベースの健康サポート、明確で公正な校則がある学校環境。
どうでしょうか。こうして整理してみると、なるほどと納得がいくのではないかと思います。ただ、よく内容を精査してみると、「安全」の概念の中に、銃などの武器の持ち込みや薬物依存のことが入っていたり、国籍や宗教、文化に関する差別のことが入っていたりと、そのまま日本に持ち込むのは難しいと思われました。
そこで、私たちは文部科学省の委託事業「子どもみんなプロジェクト」の取り組みの中で、実際に日本の子どもたちが感じている学校風土が何かについて研究を行いました。具体的な方法は割愛しますが、ここで強調しておきたいのは、いわゆる有識者が勝手に選択して作るのではなく、教育委員会を通して日本のリアルな学校の児童生徒に協力を得て、統計的に意味のある項目が何かを明らかにしたということです。
次回は、この日本学校風土尺度(Japan School Climate Inventory:JaSC)について、説明したいと思います。