「自分が変わる。未来が変わる。次世代を見据えて私が大切にすること」。全連小機関誌「小学校時報」に掲載された元福岡ソフトバンクホークス監督の工藤公康氏による教育随想の表題だ。
漫画「巨人の星」に似た幼少期の生活。その厳しさから早く上達しようと考える習慣を身に付け、「固定観念にとらわれず、クエスチョンを持ち、探求し続けること」が自身の礎となる。現役引退後は大学院でスポーツ医学を学ぶが、コーチ経験もなくマネジメントも学んでいない。なぜ、トップクラスの常勝監督になれたのか。
1つは選手が1年でも長くユニフォームを着ることができるようユーティリティープレーヤー(万能選手)を育成。育った選手たちが常勝軍団を支えた。
もう1つは「循環型」の組織づくり。一軍と二軍のずれが生じると選手を生かせない。一軍と二軍の状況を照らし合わせて共通の認識を持つようにする。コーチも一~三軍を循環する。これにより勝ち続ける組織になっていく。システムや選択肢、きっかけをいかに多く提供できるかを重視する。
3つ目は選手からコミュニケーションを学んだこと。自分の意見を一方的に押し付けたり、伝えたように動いていないことをとがめたりした。選手は困惑する。2016年に優勝を逃した後に伝わっていなかったことを反省し、双方向のコミュニケーションを心掛ける。情報を集め選手を知る努力をする。選手一人一人の未来につながるコミュニケーションの重要性を学ぶ。選手を大事にし、常に学ぶ姿勢が最高の成果を上げたのだろう。