今年度の全国学力・学習状況調査が4月18日、全国の小学6年生と中学3年生を対象に行われた。17日深夜に発生した豊後水道を震源とする地震の影響で一部の学校は後日実施となったが、約202万人の児童生徒が参加した。今年度は国語、算数・数学の2教科で実施され、「主体的・対話的で深い学び」に向けた学習過程を意識した観点から問題が作成され、1人1台端末の整備も踏まえて「フィルターバブル現象」などICT活用を題材にした出題も目立った。また、生活習慣などを尋ねる児童生徒質問紙調査は初めて、全児童生徒がオンライン方式で回答した。
今年度の全国学力・学習状況調査への参加学校数は4月8日時点で国公私立合わせて2万8414校(後日実施を含む)で、参加率は国立が100%、公立が99.96%、私立が37.8%となっている。このうち17日夜に高知県と愛媛県で震度6弱を観測した地震の影響で休校したり、授業時間を短縮したりした小中学校の多くでは後日実施される見通し。
国立教育政策研究所(国研)の担当者によると、今回の教科調査では「児童生徒が自ら問題を見いだし、考え、対話しながら問題を解決したり、学習活動を自ら振り返り意味づけたりするなど、『主体的・対話的で深い学び』の実現に向けた学習過程の改善のメッセージとなるような観点」や「日常生活の場面などにおいて問題を解決したり、考察したりする観点」などを意識して問題が作成された。
小学校の国語では、自分の学校の良さを伝えるために、自分の考えや下級生から聞いたことをまとめたメモを基に文章にする問題が出され、目的や意図に応じて自分の考えが伝わる表現を工夫する力が問われた。算数では、1970年代から2010年代にかけての桜の開花日の推移をまとめたグラフなどを基に開花予想日を調べる方法を考える問題が出され、表やグラフを用いて身近な事象を考察することが求められた。
中学校の国語では、インターネットの検索履歴を基に、自分の好む情報が優先的に表示されるようになる「フィルターバブル現象」を題材に、グループ討議で出された意見を読んだ上で、自分の考えを文章にする問題が出題された。数学では、障害物を感知して止まる車型ロボットの速さと止まるまでの距離について、5つの箱ひげ図の比較から説明する問題が出題され、データの傾向を読み取り、考察して判断することが求められた。
また、学校現場での1人1台端末の整備を背景に、「フィルターバブル現象」以外でも、小学校の国語で学校の取り組みをオンラインで紹介し合う場面が取り上げられた。これについて国研の担当者は「学習指導要領でもICTを活用した学習活動が示されており、教科の特質に応じてICTを活用した授業場面を示すことは大事だと考え出題した」と説明した。
今回の調査について、国研の担当者は各教育委員会や学校に対し、「調査問題や解説資料などを活用して、個々の児童生徒の実態を考慮しながら指導方法の改善や児童生徒の学習改善、学習意欲の向上などに向けた取り組みを組織的継続的に進めてほしい」と述べた。
一方、生活習慣や学習環境を尋ねる児童生徒質問紙調査は、今回初めて全て学習用端末への入力で回答された。この中では、主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善に関する取り組み状況をはじめ、児童生徒がICTを活用した学習についてどのような点に有用性を感じているか、また、学習への興味・関心や授業の理解度については、国語と算数・数学に加えて、今回は教科調査が実施されなかった理科と英語についても、フォローアップするために項目として加えられた。
児童生徒質問紙調査については、ネットワーク環境を考慮して日程を分散して実施されており、4月10日から始まっているが、今のところ目立ったトラブルは報告されていないという。
さらに今年度は全国的な学力状況の経年変化を分析するための経年変化分析調査と、保護者に対する調査も実施される。全国で小学校1200校程度、中学校1500校程度を抽出し、5月13日から6月28日の期間中に実施される予定。対象校の約半数は冊子を用いた筆記方式で、残り半数はオンライン方式で行われる。
全国学力・学習状況調査の結果は7月末に公表される。
今回の調査問題・正答例・解説資料は、国立教育政策研究所のウェブサイトで確認できる。