教職調整額の引き上げは「適当ではない」 財政審が建議

教職調整額の引き上げは「適当ではない」 財政審が建議
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 財務相の諮問機関である財政制度等審議会は5月21日、国の財政運営に関する建議を公表し、中教審の質の高い教師の確保特別部会が求めている教員の処遇改善に関連して、主任手当の引き上げなど、負担に応じたメリハリある給与体系とするのが基本とする考え方を示した。特別部会の「審議のまとめ」で盛り込まれた教職調整額の引き上げについても、適当ではないと結論付けた。

 建議では、2025年度予算編成で行われる予定の教員の処遇見直しに関して、教職調整額の水準を引き上げるべきだという意見に対し、①人材確保との関係(教職業務の効率化の徹底)②民間や一般行政職とのバランス③メリハリある給与体系(既定の給与予算の活用)④安定財源の確保(歳出・歳入の見直し)――の4つの視点に立った議論が必要だと指摘。

 ①では、教員採用試験の倍率が低下しており、人材確保のために給与を引き上げるべきだという意見があるが、試験の受験者数は一定数を維持していることから、倍率の低下は「必ずしも教職の人気低下によるものではなく、教員の年齢構成による近年の大量退職・大量採用に伴う構造的な現象」だと反論。今後、若年人口が大きく減少していく中で中長期的に質の高い人材を採用し続けていくには、働き方改革やデジタル化、外部人材の有効活用などによって教職業務の効率化を徹底し、教員のマンパワーだけに頼らない効率的な教育現場への転換を進めるべきだとした。

 ②では、教員勤務実態調査の結果を踏まえれば、一定の処遇改善を検討する必要があるとの認識を示す半面、若年人口の減少で福祉などの他分野との人材確保の競合となれば、国全体で望ましい人材の配分にならないとした。その上で、▽教員を含む地方公務員の給与は国や民間の給与などを考慮するとされており、教員の給与は人事院勧告を踏まえ、近年の民間の賃上げの影響が反映されて大幅に改善され、今後もその可能性が高い▽教員の給与は時間外勤務手当を含む一般行政職の給与より高い▽外部人材拡充の効果などもあり、教員の時間外在校等時間は減少しているが、一般行政職の時間外勤務は増加している▽教職調整額が本給として支給されているため、退職手当も一般行政職より優遇されている――などを挙げ、人材確保法による給与改善後の教員の優遇分の水準を確保するために教職調整額を引き上げるべきだとの意見については、同法が施行された当時と現在では社会経済情勢も大きく異なっており、適当ではないとした。

 また、③では、教職調整額を含む教員に特有の手当などを合わせると、教員1人当たり平均して残業18時間に相当する手当がすでに支給されていることや、教員の勤務時間は人によって大きな幅があり、長時間勤務を固体化する恐れもあることから、既定の給与予算を最大限に活用し、一律に給与水準を上げるのではなく、負担が大きい主任手当を増やすなどして、負担の軽重に応じたメリハリある給与体系とするのが、教員の処遇改善の見直しをする際の基本的な考え方であるべきだとした。

 ④については、教員の処遇改善を行うならば安定的な財源の確保が不可欠だとし、そのためには、▽児童生徒数の減少を踏まえ、教育環境を悪化させずに合理化できる歳出はないか▽短期間実施を想定していたが、名称を変えるなどして長期間継続しているといった事業はないか▽効果や公平性の観点から、継続する必要性が認められない租税特別措置はないか――などの観点から、文部科学省の施策全体の歳出・歳入の抜本的な見直しで財源を捻出すべきだとした。

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