中教審の質の高い教師の確保特別部会が取りまとめた「審議のまとめ」で、教職調整額の少なくとも10%以上への引き上げが提言されたことを受けて、盛山正仁文科相は5月14日の閣議後会見で、教職調整額が10%になった場合の義務教育費国庫負担金の追加額は約720億円になることが見込まれると説明した。「審議のまとめ」では、これに加え新たな職・級の創設や学級担任の義務教育等教員特別手当の加算なども盛り込まれているが、これらは今後具体的に検討していくことから、「審議のまとめ」が描いている処遇改善策や教職員定数の改善などに必要な予算の全体的な規模感については明言を避けた。
「審議のまとめ」では、教師の処遇改善策として、教職調整額を現行の4%から「少なくとも10%以上」とし、人材確保法によって一般行政職と比べて約7%の優遇分が確保された1980年の水準にすることを提言。教諭と主幹教諭の間に新たな級を設け、若手教師の育成などを担う「新たな職」を創設して、現在の主任手当よりも高い処遇とすることや、学級担任の義務教育等教員特別手当の額を加算、管理職手当の改善などを打ち出している。
こうした処遇改善策が実現した場合に国の予算がどれくらい増えるかについて、盛山文科相はまず、国が3分の1を負担している義務教育費国庫負担金における教職調整額の予算額が、現状で約480億円だと紹介。「これを前提とした場合に追加的な所要額は国費として約720億円になると見込まれる」と説明した。
一方で、新たな職・級や学級担任の特別手当の増額、管理職手当の改善などに関しては「今後具体的にどういうふうにしていくのか、検討しなければならないので、具体的な予算の全体の規模、その他については現時点では何とも言えないが、『審議のまとめ』という今回の提言を踏まえて、できるだけ速やかに検討して、教師の処遇の改善、学校の指導運営体制の充実、教師の育成支援を一体的に進めたい」と強調した。
「審議のまとめ」では小学校中学年の教科担任制の拡大や全中学校への生徒指導担当教師の配置など、教職員定数の改善に関しても触れているが、盛山文科相は「今後具体的にどういうふうにしていくかを検討していくことになるので、これ(教職員定数の改善)についても今の時点で具体的な見込み、必要なニーズを示すことはできない」と述べた。
教職調整額の引き上げを行う場合、給特法の改正が必要になるが、昨年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2023」(骨太の方針)では、2024年度から3年間を集中改革期間とし、同年度中の給特法改正案の国会提出を検討するとされている。これを踏まえ盛山文科相は、「審議のまとめ」で示された処遇改善や教職員定数の改善に関する具体化のめどについて、「それ(法改正)に関連して作業を進めることになると思う」と見通しを示した。