スウェーデンでデジタル教材などの見直しが始まっていることを本紙5月16日号が伝えている。スウェーデンといえば、スマホなどデジタル・ツールの過度な使用に警鐘を鳴らした『スマホ脳』の著者であるアンデシュ・ハンセン氏の母国である。
本紙記事によれば、スウェーデンでは2011年の学習指導要領改訂時にデジタル・コンピテンシーが明記されデジタル・ツールを使う機会を増やすとともに、学校におけるデジタル環境の整備と社会の変化を理解する批判的姿勢の育成を目指した。ところが22年の政権交代に伴う新しい教育大臣の就任によりスクリーンタイムの増加による視力の低下や読書量の減少などデジタル教材のデメリットが指摘されアナログ教材の予算増加が行われたという。
ほかにも幼児期からのデジタル機器の使用に対し、コミュニケーションの減退による言語発達、注意力、社会的スキルの発達が妨げられるとの批判、さらには手書きによる学習効果の高さが学校現場の教師たちからも指摘されるなど反デジタルの動きが活発になっている。
11年のスウェーデンが打ち出した「デジタル革命」は中教審が21年1月に出した答申「令和の日本型学校教育の構築を目指して」の中に出てくるICT活用に関する内容と共通する点が多い。
これまでもデジタル機器の過度な使用については本稿においても医学や脳科学の分野から警鐘を鳴らしてきた。「リアルとデジタルの最適な関係」にあらゆる状況の変化が現れ始めた今、わが国も本格的に見直す時期に来ているのではないか。