かつて「お客様は神様です」という言葉がはやった。大歌手であったご本人は「歌う時に、神前に祈る時の澄み切った心でなければ、完璧な芸を見せられない」という意味だったらしいが、次第に客そのものを神様のように扱うという意味に変わり、客の言うことを全て聞き、満足させることが望ましいとされるようになった。
企業では顧客から著しい迷惑行為を受けるカスタマーハラスメント(カスハラ)が問題になっている。厚労省の委託調査では、従業員からの相談はパワハラ、セクハラに次いでカスハラが多いという。現在、カスハラ対応の法整備がなされようとしているが、正当な要望とカスハラとの線引きが難しいという。
学校関係者でも、保護者の要求を聞くことが大切だと指導された方もいるかもしれない。しかし、今、保護者の理不尽・不当な要求に対応せざるを得ず、疲弊している学校もある。
学校に寄せられる意見や要望の多くは、学校の改善に結び付くものである。中には対応困難なものもあるが、無視することはできない。学校と保護者の間には子供が存在するからである。ある自治体では、保護者からの要望、苦情を引き受ける窓口を学校外に作ったというが、うまくいくのだろうか。
学校と保護者が協力して子供を育てていくのが、本来の姿である。学校と保護者の間に溝を作らない努力を怠らないことは大前提だ。同時に学校は理不尽な要求を突き付けられた場合の対応の仕方の研修と、すぐに相談でき、迅速かつ的確に助言をしてもらえる体制づくりを求めている。