政府の経済財政諮問会議が6月11日開かれ、2025年度の予算編成方針となる「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」の原案が示された。教師の働き方改革や処遇改善に向けて、現在、残業代の代わりに月給の4%を支給している教職調整額の水準や各種手当の見直しなどを検討した上で、「25年の通常国会への給特法改正案の提出を検討するなど、教師の処遇を抜本的に見直す」と明記された。今年5月の中教審特別部会の「審議のまとめ」を受けた形で、今後、原案をもとに与党や各省庁で内容を調整し、今月中に閣議決定される見通し。
原案のうち「質の高い公教育の再生」では、質の高い教師の確保・養成に向けて、24~26年度の集中改革期間を通じてスピード感をもって、働き方改革のさらなる加速化や処遇改善などを一体的に進めることが打ち出された。学校の働き方改革では取り組み状況の見える化などを進め、教師の時間外在校等時間の削減を徹底して進めることが示された。
処遇改善を巡っては、教職の特殊性や教師不足解消の必要性などに触れて、教職調整額の水準や各種手当の見直しなど、職務の負荷に応じたメリハリある給与体系への改善も含めた検討を進める方針を示し、「財源確保と合わせて、25年の通常国会へ給特法改正案の提出を検討するなど、教師の処遇を抜本的に見直す」と明記された。
「教師の処遇の抜本的な見直し」の表現は、昨年の骨太の方針にもあったが、今年5月に中教審の質の高い教師の確保特別部会が、教職調整額を現行の4%から少なくとも10%以上に引き上げることや若手教師のサポートなどを担う「新たな職」を創設する方針を示したことを受けて、改めて「給特法改正案の25年の通常国会提出検討」や「各種手当の見直し」の文言が盛り込まれ、処遇改善に取り組む姿勢をより強く示す形となった。
また、段階的に進めている公立小学校の35人学級については、小学校での多面的な効果検証などを踏まえつつ、中学校を含めて学校の望ましい教育環境や指導体制を構築していくとし、これまでの骨太の方針の考えを引き継いだ。
高等教育の機能強化については、少子化が進む中、質・アクセス・規模の在り方について24年度中に一定の結論を得た上で、教育費の負担軽減に向けて、修学支援新制度などの着実な実施とともに、効果検証を通じた適切な見直しなど、必要な支援の検討を進めるとしている。高校段階についても、質の向上を図りつつ、教育費の負担軽減を推進することを盛り込んだ。
少子化対策・こども政策を巡っては、昨年12月に閣議決定されたこども未来戦略などに基づいた施策を実施し、少子化の流れを変えて社会経済の持続可能性を高めていく方向性が示された。施策の実施にあたってはEBPM(証拠に基づく政策立案)を実行し、政策効果の高い歳出への転換を図ることも打ち出された。
具体的な施策としては、こども・子育て支援の「加速化プラン」などに基づいて、今年10月分からの児童手当拡充など経済的支援の強化や、こども誰でも通園制度など全ての子ども・子育て世帯を対象とする支援の拡充に取り組む方針を示し、必要な環境整備を進めるとしている。
こども大綱の推進に関しては、保育現場の負担軽減を図りつつ、人口減少地域での保育機能の維持も含めて保育提供体制の在り方を早急に示すことや、妊娠の前から女性やカップルをケアするプレコンセプションケアについて5カ年戦略を策定して着実に推進することを盛り込んだ。また、貧困と格差の解消を図るため、困難な状況にある子ども・若者や家庭に向けたアウトリーチ支援、学習支援などを通して見守りを強化することなどが示された。
子どもの自殺対策の強化やいじめ防止・不登校対策の強化、学校給食の無償化に向けた課題整理なども引き続き盛り込まれた。
新藤義孝経済財政担当相は経済財政諮問会議後の記者会見で、「与党とさらに調整を進め、今月中に骨太方針を決定することを目指したい。人口減少の中でも、豊かさと幸せを実感できる持続可能な経済社会の実現につながる強い覚悟を示す骨太の方針にしたい」と述べた。