学校給食費の無償化に向けて、文部科学省は6月12日、すでに学校給食費の無償化を実現している自治体の取り組み状況などを収集した調査結果を公表した。昨年9月1日の段階で無償化を実施していた自治体は、40.2%に相当する722自治体に上り、そのうち75.8%に当たる547自治体では、特定の支援要件を設けず、全ての小中学生を対象にしていた。
子育て支援の充実のため、昨年6月に閣議決定された政府の「こども未来戦略方針」では、学校給食費の無償化の実現に向けて、無償化を実施している自治体の取り組み実態や成果・課題などの実態調査を行い、1年以内にその結果を公表することとしている。これを受け文科省は、隔年で実施している「学校給食実施状況等調査」に加え、都道府県・市区町村教育委員会に対し、学校給食費を無償としている際の支援対象や要件などを調べた。
5月1日時点での学校給食の実施状況は、小学校が98.8%、中学校が89.8%、特別支援学校が88.9%、夜間定時制高校が51.4%で、パンまたは米飯、ミルク、おかずが付く完全給食を実施していた。公立学校で完全給食を実施していない理由では、児童自立支援施設、病院、児童養護施設などにある学校で、それらの施設で昼食が提供されている場合が最も多く、この他には給食施設・設備の問題や地理的理由、財政的理由が挙がった。
完全給食の実施率を児童生徒数ベースでみると、公立学校では小学校が99.9%、中学校が97.8%、特別支援学校が94.7%だったが、喫食数ベースでは、小学校が99.6%、中学校が89.2%、特別支援学校が88.9%と、給食実施校であっても、約28万5000人の児童生徒が給食の提供を受けていないことが分かった。この背景には、重度のアレルギーで弁当を持参していたり、不登校で喫食をしなかったりするケースのほか、選択制給食で給食を希望していない場合が多く含まれるとみられる。
完全給食の給食費(実際に保護者が支払った額ではなく、食材費に相当する金額)の月額平均は、小学校で4688円、中学校で5367円、夜間定時制高校で5344円となり、小中学校は直近5年間で約8%、10年間で約12%上昇している。都道府県間で比べると、小学校は最低の滋賀県の3933円から最高の福島県の5314円まで、中学校は最低の滋賀県の4493円から最高の富山県の6282円まで、1.4倍弱の開きがあった。
昨年9月1日の時点で、1794自治体中775自治体が、予定を含めて何らかの形で昨年度中に学校給食費の無償化を実施しており、すでにその時点で無償化を実施している722自治体のうち、547自治体が小中学生の全員を対象に、145自治体が多子世帯に対してなど、支援要件を設けて実施していた(=グラフ)。無償化の財源を複数回答で尋ねると、ふるさと納税や寄付金を除く自己財源から捻出しているのが475自治体、地方創生臨時交付金を充てているのが233自治体あり、ふるさと納税や都道府県からの補助という回答もあった。
すでに無償化を実施している自治体の政策目的では「保護者の経済的負担の軽減、子育て支援」が652自治体と多くを占めた一方、「食育の推進」など教育の質の向上に直結する目的を掲げている自治体は少なかった。学校給食費の無償化による成果の例では「経済的負担の軽減、安心して子育てできる環境の享受」(442自治体)、「給食費の徴収や未納者等への対応負担の解消」(199自治体)などが多く挙がった。
また、成果目標を設定しているのは97自治体にとどまり、603自治体が成果検証・評価の実施予定がないと答えていた。
文科省では、公立小中学校などに加え、特別支援学校の幼稚部から高等部の給食費(食材費相当)の合計額は約4832億円になると推計。国立学校や私立学校に在籍する児童生徒も含めて、完全給食を提供した場合は、合計で約5100億円に上るとみている。
文科省ではこの調査結果を基に、児童生徒間の公平性やこれまでの経緯を踏まえた国と地方の役割分担、政策効果などの観点から、学校給食の無償化の課題整理を今後行っていく方針。