自由進度学習に取り組んでいる児童は、授業中でも立ち歩いていたり、床に座っていたりすることがある。遊んでいるようにも見えるが、実は全員が学習している。学習内容が分からなくて何もできない子、課題を早く終えて時間をもて余している子は一人もいない。子ども同士の教え合い、学び合いも自然に生まれている。
本校では、昨年度から自由進度学習に取り組んでいる。この研究テーマにするにあたって、研究主任から、一人一回の授業研究ではなく、学年で相談して自由進度学習の授業をつくるという形の提案があった。
大規模校である本校では、4~5人の担任が話し合って学年の授業を考えることになる。若手・中堅・ベテランが話し合い、自由進度学習に適した教科・領域・単元を選び、どの学級でも同じ指導案で授業を行った。
1年生の国語科「のりものカードでしらせよう(10時間完了)」は、自分で選んだ乗り物の役割やつくりについて友達に紹介する学習である。児童の意欲を引き出すための環境づくりとして、30種類以上の乗り物に関する資料を、教室と廊下に種類別・難易度別に並べた。児童は資料を自由に見て、友達に紹介したい乗り物を決めて取り組んだ。何度も資料を手に取って選び直したり、何種類も紹介しようとしたりするなど、意欲的に学ぶ姿が見られた。
6年生の算数科「図形の拡大や縮小(10時間完了)」では、第2時から9時で、目標や取り組む活動を自ら決める自由進度学習を取り入れた。目当てや既習事項の確認後、本時の学習の見通しをもたせる「ミニレッスン」を行い、その理解度を踏まえて、個々に目標や取り組む活動を自己選択・自己決定させた。基本の定着を図りたい児童は、教科書やドリルの問題に取り組み、基本が定着している児童は、オリジナル問題を作成したり、友達に説明するための動画を作ったりするなど、個々の理解度や興味・関心に応じた学習に取り組んだ。同じような活動をする児童と一緒に取り組む姿も見られた。
昨年9月に、名古屋市の学びの基本的な考えを示した「ナゴヤ学びのコンパス」が公表された。本校の自由進度学習は、まさにこの考えに合ったものである。
昨年度、不安を抱えながらも一歩を踏み出したからこそ、本校の教員には自由進度学習の魅力と課題が分かる。昨年度の取り組みを踏まえ、今年度は「見通す段階での工夫」に重点を置き、より「子ども中心の学び」になる授業を積み重ねている。2学期には、自由進度学習に取り組む様子を保護者に参観していただくことになっている。PTAも、家庭教育セミナーや広報誌で自由進度学習のことを取り上げる予定である。本校の取り組みが一歩一歩進んでいることを、うれしく思う今日この頃である。
(文責・伊藤葉子校長)