「4つの想像力のスイッチ」を 下村健一さんが小学生に課外授業

「4つの想像力のスイッチ」を 下村健一さんが小学生に課外授業
小学生らにSNSなどで流れてくる情報の受け止め方を教える下村さん=撮影:川嶋千恵
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 スマホやタブレット、SNSの普及などで子供たちがインターネット上で流れる情報に触れる機会が多くなる中、初めて知る情報をどのように受け止めたらよいのか考えようという「課外授業」が7月31日、東京都千代田区の四番町図書館で開かれた。この講座は小学生を対象に千代田区立図書館で毎夏開かれている「夏のわくわく課外授業」の一環で、この日は、全国各地の小中高校や教員の研修会などで20年間メディアリテラシーを教えている、元TBSアナウンサーで現在は白鴎大学教授の下村健一さんが講師となり、小学4~6年生が参加した。

 「スマホを持っている人、いる?」と下村さんは子供たちに尋ねた後、それぞれ紙のまん中にスマホ大の穴をあけてもらい、その「窓」の中から何が見えるかを聞いた。「プロジェクター」「換気扇」「車いす」などと小学生らが答えると、「みんな見ている世界はバラバラだね。ネットやスマホは便利だけど危なさもある」と注意を呼び掛けた。「はまり過ぎて時間が奪われる」「自分からワナに落ちて痛い目にあう」「デマや間違いを信じて被害者になる」「デマや間違いを広めて加害者になる」の順に危険度が増すと説明し、「えっ」と思う初めての情報に出合った時に「ソ・ウ・カ・ナ」という「4つの想像力のスイッチ」を入れようと、キーワード順に説明していった。

 1つ目の「まだ分からないよね?=ソク断するな」では、例えば「明日大地震が来る」という情報を見聞きした場合、「『まだ分からないよね?』といったん止めて考えることが大切」と下村さん。逆に「地震が来ない」と言っている情報はないか、その情報に詳しそうなのはどこかなどを調べようと呼び掛けた。2つ目の「事実かな、印象かな?=ウのみにするな」では、事実と印象とを分けて考えること、3つ目の「他の見方もないかな?=カタよるな」では、例えば「クマが人里に出てきた」というニュースは他の見方がないか、クマの立場で考えたり違う角度で見たりすること、4つ目の「何がかくれているかな?=ナカだけ見るな」では、伝わってくる情報はどこかにスポットライトを当てたもので、周りの暗がりに何が隠れているか想像することが大事だなどと、事例をたくさん出し、子供たちに発言を促しながら説明していった。

 また、将来、ネット上などで情報を発信する際、一番大切なのは「思いやり」を持つことだとも強調した。

 参加した小学4年生の女子は「こういう授業は初めてで、情報に振り回されないコツが分かって楽しかった」と話した。小学5年生の男子は「スマホを持ちたくていろいろと調べているけど、本などで習えないことをたくさん知ることができて面白かった。身近なことですぐ試せそうなので、やってみようと思う」と満足そうだった。

 下村さんは、多くのメディアが無実の市民を犯人扱いして実名報道した1994年の「松本サリン事件」を契機に、メディアリテラシーが重要だと痛感した。99年、カナダでの先進的なメディアリテラシーの取り組みを報道した後にTBSを退職。以後、市民グループや学生、子供らの映像・音声リポート制作を支援する市民メディア・アドバイザーをしながら、メディアリテラシーの講師としても全国の学校で教えてきた。下村さんの「想像力のスイッチ」についての文章は、小学5年の国語の教科書の一部にも掲載されている。

 下村さんは「GIGAスクール構想などで子供たちが早期にネット上の情報に触れるようになったが、『花火を配って火の扱い方を教えていない』という状況も見られる。子供たちにメディアリテラシーを教え、社会の分断を防いでいくことが大切だ」と話した。

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