大手学習塾が行った調査で首都圏や関西圏で中学入試の受験率が昨年度過去最高に達していることが分かった。
それまでは受験者層がある程度高学力の児童に限られてきた中学入試だが、最近は受験教科を1教科にするなど入試方法の多様化が図られ私立学校間の過激な獲得競争が垣間見える。そこには自らも私立中学校出身で特色ある私学の教育方針に共鳴する親の存在がある。言い換えれば、現在の公立校に魅力がないという認識が親や世間一般に定着しつつあるともいえる。
教員の働き方改革で公立校の教育内容の軽量化が話題になるなど教員ファーストの風潮がある中で、親のニーズはより個性的な内容の多い私立校の教育に集まっているということになろう。実際、ここ最近の公立校を見れば、20代の若手教員が増え、授業をはじめ教育の質の低下は否めない。こうした不安も私立志向の原因の一つと思われる。
さて、公立校である。私立校に対しどのような対策を考えているのか。大多数の学校は設置者たる自治体の財政難から施設面の改善を求めることは難しい。やはり教育内容で差別化を図るほかないだろう。しかし、ただでさえ若手教員の多い学校に何ができるか。
答えは地域密着型の「特色ある教育」である。例えば伝統行事の保存、地域の産業、環境、福祉などの調査研究と解決のための提案など。まさに地域貢献・参加型の教育活動の展開である。公立校故に生徒の郷土愛も育める。すでに全国で実践は数多くある。校長が教員を連れ地域を知ることから始めたい。