第4回 OECD「ラーニング・コンパス2030」におけるエージェンシー

第4回 OECD「ラーニング・コンパス2030」におけるエージェンシー
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 エージェンシーが私たち日本の多くの教育者の目に触れ、耳に届き始めたのは2018年以降でしょう。当時、OECD教育スキル局が加盟国と進めた「Education 2030プロジェクト」において、2030年の社会で子どもたちに求められるキー・コンピテンシー(鍵となる資質・能力)の検討が行われていました。

 このコンピテンシー議論の中間報告書「ポジション・ペーパー」の冒頭で初めて示されたのが、教育の広範な目標としての個人・社会・世界・地球のウェルビーイングの実現、そしてこのウェルビーイングの実現に必須の能力として位置付けられたエージェンシーでした。

 その後、OECDは19年にキー・コンピテンシー検討の集大成として「OECDラーニング・コンパス(学びの羅針盤)2030」をリリースしています。この「ラーニング・コンパス2030」では、「生徒エージェンシー」を以下のように解説しています。

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 生徒エージェンシーの概念は、生徒が自分の人生や周りの世界に対してポジティブな影響を与えうる能力と意志を持っているという原則に基づいています。その上で生徒エージェンシーとは、変革を起こすために目標を設定し、振り返りながら責任ある行動を取る能力として定義付けられます。(OECD「2030年に向けた生徒エージェンシー」p.3)

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 こうして見ると、エージェンシーはずいぶんと複雑な能力のようです。私は初めて解説文書を読んだとき、エージェンシーの意味を十分に理解できませんでした。

 幸運なことに私は、「ラーニング・コンパス2030」のリリース直前、18年10月にパリで開かれたEducation 2030の会議に参加する機会をいただきました。初日の初参加者向けセッションに出席し、そこで司会進行を務められたOECD分析官の方に、「エージェンシーはコンピテンシーですか?」と思い切って尋ねてみました。すると分析官の方が「はい、エージェンシーはコンピテンシーです。複合コンピテンシーの一つです」と教えてくれました。なるほど、エージェンシーは「複合コンピテンシー」なのです。

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