第8回 教師たちのエージェンシー

第8回 教師たちのエージェンシー
【協賛企画】
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 学校教育を通じて、子どもたちが個人・社会・世界・地球のウェルビーイングの実現に向けてエージェンシーを育み、発揮していくのを支える最重要エージェントが教師たちです。教師たち自身がエージェンシーを発揮しなければ、子どもたちもエージェンシーを発揮することは難しくなると言えます。

 実際に、「新たな教師の学びの姿」を提唱した2022年12月の中教審答申「『令和の日本型学校教育』を担う教師の養成・採用・研修等の在り方について~『新たな教師の学びの姿』の実現と、多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成~」に先立ち、「『令和の日本型学校教育』を担う教師の在り方特別部会」で、教師エージェンシーの議論が行われています。この特別部会では、教師の資質能力と学び方を整理する上で、「(教師が)管理職や同僚教員との対話を通じて、自らが担うべき役割の認識共有を図りつつ、主体性をもって学びの目標を設定し、必要な学びを選び取っていく行動が必要」とし、この教師の行動を駆動する力としてエージェンシーを例示しています。

 ただし、ここで教師エージェンシーを教師個人の資質能力と捉えてしまうのは拙速です。エージェンシーを発揮することで私たちが目指すウェルビーイングが個人から社会・世界・地球へと同心円に拡張していくのと同じように、教師エージェンシーもまた教師個人から社会・世界・地球へと広がっていくものと捉えることができます。その意味で、教師エージェンシーは少なくとも「教師たちのエージェンシー」と捉えることが大事になります。

 学校の中で教師たちは専門職として互いに助け合い、学び合い、協働することで子どもたちのエージェンシーを育んでいます。また、こうした助け合いや学び合い、協働の相手は同僚関係にとどまらず、その他の職員やスクールカウンセラー、保護者、地域の人々、そして子どもたちなどに広がります。教職は孤立した専門職ではなく、同僚と協働する専門職、さらには多様なステークホルダーと新しい価値を協創する専門職なのです。

 つまり、これからの学校教育では、子どもたちと教師たちが互いにエージェンシーを育み合い、発揮し合うことが大切になるのです。これを学校教育の具体的文脈でどのように実現するのか、次回考えていきましょう。

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