先日公表された報告書『図表でみる教育2024年版』に関し、OECDのシュライヒャー教育・スキル局長の会見内容を本紙が報じていた。その中で、日本の教員確保のための処遇改善策である給与水準の引き上げに対し同氏が触れた内容に注目した。
同氏は、教師になりたいと考える人にとって給与水準はあくまで補完的な要因に過ぎないとの見解を示した上で、教師という専門職に対する充実したサポートがあるか、教師同士が協働して切磋琢磨しながら研さんを積む場が与えられるかも教職に就く際の判断材料になると、ある意味、質の高い教員確保のための示唆を与えてくれた。
教職に限らず、世の中は人材不足がまん延している。給与の引き上げも対策の一つであろう。教員のような専門職においては一人一人の能力は言うに及ばず、何より人間性の高さなど人材の質そのものが問われる。
処遇改善に向けた議論も進んでいるが教育という学問に強い関心を持ち教員という仕事にやりがいを感じる人材の確保こそ政策の基本に据えなければならない。それは「ウェルビーング」の考えにも通じる。具体的には「個別最適な学び」「協働的な学び」を成立させるための適正な学級規模であり、授業の持ち時数であり、教員本来の業務内容であり、そうした条件をクリアした上での報酬である。
ある小学校に赴任した新卒教員の言葉がいまよみがえる。「好きな子供たちと毎日一緒に生活できて給料までもらえる、こんな素晴らしい仕事が他にありますか」。こうした教員の思いを応援したい。