(鉄筆)次期学習指導要領

(鉄筆)次期学習指導要領
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 次期学習指導要領の改訂に関し中教審での議論が始まった。最近本紙でも識者からの意見を掲載しているが、感じることは現行の学習指導要領の「量」に関する討議が過去よりも目立つことだ。中には教師の負担が多いという働き方改革を前提としたものもある。中教審でもそうした意見が少なくない。

 思い出してもらいたい、1998年版の学習指導要領を。「ゆとり教育」と呼ばれ、初登場した総合的な学習の時間の影響もあり各教科の学習内容が大幅に削減された指導要領である。PISA調査でわが国の子供たちの学力を低下させ、世論は「ゆとりからの脱却」をうたい、結局、08年版そして現行版で教科の学習内容は98年版前にほぼ回復した。現在のPISAの調査結果も世界トップクラスにある。この現状を中教審はどう見るのか。

 筆者はその98年版の作成協力者であった。当時の文部省の担当者は、体験活動など子供の主体的な活動をなるべく多く入れ、その分、学習内容は削減しろの一点張りだった。主体的な学習の指導法や学習意欲・思考力を育てる評価法に対し現場が未熟な時代だったこともあり、招いたのは学力低下と現場の混乱だった。いま「主体的・対話的で深い学び」や「個別最適な学び」を教員として具現化しろと言われたら、おそらく「もっと持ち時数を減らした上で教科の授業時数を増やしてほしい」と言うだろう。

 まずは「主体的・対話的で深い学び」の授業レベルの具体像を確認してから現行版の見直しをすべきではないか。苦い歴史は繰り返してはいけない。

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