一般紙で「教科書『紙』に回帰」の見出しが目に入った。スウェーデンの情報で「端末重視で学力低下」とある。スウェーデンはIT先進国で2006年には1人1台端末が始まり、教科書・デジタル教材への移行が進んだ。わが国より15年ほど早い。
しかし、23年から脱デジタルにかじを切った。「子供たちの集中力が続かない、考えが深まらない、長文の読み書きができない」など学習への影響を考慮したもの。国際学力調査でも学力低下が目立つようになってきたという。文部科学省の「デジタル教科書の今後の在り方検討会議」の報告には、デメリットの一つに「授業中の集中力や思考力の低下」が挙げられていた。
今年度から小中学校の英語でデジタル教科書が正式導入され、今後拡大していく方向にある。民間の調査では保護者の6割がデジタル教科書を知らず、7割以上が不安を感じると答えている。この新聞記事を読んで不安が一層高まらなければよいが。
スウェーデンの学校では少しずつ端末の使用を減らし、月に計1時間程度、効果的な場面だけで使うようだ。文科省の「今後の教育課程、学習指導及び学習評価等の在り方に関する有識者検討会」の「論点整理」(24年9月18日)は、「デジタル教科書の在り方等についてあらためて検討すべき」としている。中教審のワーキンググループ(作業部会)は、デジタル教科書の推進に向けた検討を始めている。
デジタル教科書使用の効能だけでなく、弊害の有無をきちんと調査し、子供・保護者・国民に説明する必要がある。