条件付きで教職調整額を段階的引き上げ 財務省案を提示

条件付きで教職調整額を段階的引き上げ 財務省案を提示
記者会見で部会での議論を説明する土居部会長代理=撮影:藤井孝良
【協賛企画】
広 告

 財務省は11月11日、財政制度等審議会(財務相の諮問機関)の財政制度分科会歳出改革部会を開き、文教・科学技術をテーマに議論を行った。公立学校の教員給与に関して財務省からは、働き方改革を進めるという条件の下、給特法の教職調整額を、10%を目指して段階的に引き上げつつ、10%に達した段階で時間外勤務に見合った手当(残業代)を支給する仕組みへの移行を検討する案が示された。また、産休・育休代替教員の国庫負担を臨時講師に限定していることが教員不足の一因となっているとし、産休・育休代替教員の国庫負担を正規の教職員も対象にすることも提案した。

教職調整額の段階的引き上げと将来的な残業代支給の仕組みへの移行を示した財務省案=出典:財務省資料
教職調整額の段階的引き上げと将来的な残業代支給の仕組みへの移行を示した財務省案=出典:財務省資料

 教員の給与を巡り、文部科学省は来年度概算要求で教職調整額を13%に引き上げ、人材確保法による処遇改善で最も高かった時期を超える優遇を実現する方針だが、この日の部会で示された財務省案では、教員の不満は給与面よりも仕事と生活のバランスにあり、学校業務の抜本的縮減をせずに教員給与を上げても不満は改善しないと強調した。

 文科省の要求には、①:実効性のある学校業務の縮減策と連動していない②:各教員の在校等時間に差があるにもかかわらず、その差に応じたメリハリがない③:①、②の問題を抱えているため、必ずしも教職の魅力向上につながらず、効果に乏しい④:教職調整額を4%から13%に引き上げる場合に必要とされる年間5600億円程度の公費の安定財源も示されていない――と指摘。教員の勤務実態や①~③の観点を踏まえると、例えば5年間程度の集中改革期間に、学校業務の抜本的な縮減を進める仕組みを実施した上で、労働基準法の原則に則って残業代を支給することが教職の魅力向上につながるのではないかと問題提起した。

 その上で、教職調整額を10%を目標に段階的に引き上げつつ、10%に達した段階で所定外の勤務時間に見合う手当を支給する仕組みに移行することを検討することが考えられるとし、その際に、ただ教職調整額を引き上げるのではなく、2019年に中教審が答申した「学校・教師が担う業務に係る3分類」に基づく業務の見直しを厳格に行うこと、外部対応や事務作業、福祉的な対応、部活動などは縮減か首長部局・地域への移行を進めること、勤務時間管理の徹底、校務DXの加速化、長期休暇を取得できるような環境整備などによる時間外在校等時間の縮減などをインセンティブとし、これらの働き方改革が進まなかった場合は、原因を検証してより有効な手段に財源を振り向けることを条件とした。

 財務省案では、所定外の勤務時間に見合う手当に移行するタイミングは2030年度を想定し、移行による影響に留意する観点から、業務負担に応じたメリハリある新たな調整手当の枠組みも併せて検討するとしている。

 また、財務省案では、教員の負担軽減策として市町村費負担事務職員や用務員を配置することや、産休・育休代替教員について、全員を臨時講師とするのではなく、産休・育休取得を見越して一定数の正規の教員を確保しておくことが考えられるとし、産休・育休代替教員の国庫負担を臨時講師に限っている現状がそのハードルとなっているのであれば、正規の教職員も国庫負担の対象としてはどうかとも提案している。

 部会の終了後に、司会を務めた土居丈朗部会長代理(慶應義塾大学経済学部教授)は財務省内で記者会見を開き、この日の主な議論を紹介。土居部会長代理によると、大半の委員は財務省案に賛同し、出席した委員からは「教職調整額の引き上げに残業時間の縮減というインセンティブを付けるのは非常に良い」「給与増は賛成だが一律引き上げはやめるべきだ」「教育は村社会になってしまっており、タスクシフトといった規制改革が重要だ。また、自治体任せ、現場任せにするのではなく、国が3分類の厳格化などのルールを主導すべきだ」などの意見が出たという。

広 告
広 告