全国知事会の会長を務める宮城県の村井嘉浩知事が、全国学力調査について「毎年続ける必要があるのか」と否定的な見解を示した。これは村井知事個人の見解ではなく全国知事会の席上、他の知事からも出された意見のようだ。
村井知事といえば、05年の初当選から5期19年にわたり現職を務めている。従って同調査について十分理解していると思っていたが、どうやら教育のことはあまり関心がないようだ。4月にも国民スポーツ大会をやり玉に挙げ、自治体の財政負担が重荷だとして「廃止も一つの考え方」と問題提起した御仁である。日本スポーツ協会が抜本的改革に乗り出しているのを見て、まさか2匹目のドジョウを狙っての今回の発言とは思いたくないが。
知事の発言で気になるのが「労力とお金をかけて毎年やらなくても学力レベルを見るだけなら数年に1回やれば傾向は見える」という点だ。同調査はかつて民主党政権下においても似たような指摘を受け調査対象を3割にするという措置が取られたが、その後安倍政権になって元に戻した経緯がある▼知事の発言に県のトップとしての責任感は感じるが、本調査の分析結果を活用して学校経営にまい進している校長や学習指導に苦労しながら子供一人一人の学力を向上させようとしている教師たちの姿は見えていない。
民主党政権時には多くの教育関係団体が悉皆(しっかい)調査の復活を訴えた。今回はまず各都道府県の教育委員会の方々が、専門家としてその誤解を解くための働き掛けを知事に対し行う必要がありそうだ。