教員志望者の受験機会を増やすなどの目的で、少なくとも36自治体が大学3年生から教員採用試験の1次試験を受けられるようにしていることが、12月5日、教育新聞が教員採用試験を実施している自治体などに行ったアンケートで分かった。今年実施された教員採用試験を受験した教育新聞の読者に行ったアンケートでも、8割を超える人が「大学3年生だったら受験してみたい」と答えており、ニーズに合致した施策であることがうかがえる。
アンケートは教員採用試験を実施している都道府県・政令市、大阪府豊能地区教職員人事協議会に10月中旬から11月中旬にかけてメールで質問紙を送付し、回答を募った。11月18日までに55件の回答が来た。
大学3年生が1次試験を受験できるなどの仕組みを導入しているかを尋ねたところ、65.5%が導入していると回答。「導入していないが来年度以降の導入を検討している」は9.1%、「今のところ導入しない」は20.0%だった(=グラフ①)。
導入した理由を自由記述で聞いたところ、「受験機会を増やすことで、教員志願者の早期確保をするため」(茨城県)、「志願者の増加を図り、質の高い教師を確保するため」(栃木県)、「大学4年次は採用試験の準備が教育実習の時期と重なるなど、受験者の負担が大きいため、負担を軽減し、教育実習や面接試験の準備に集中しやすくすることで、優秀で熱意ある人材を確保したいと考え、導入した」(石川県)、「受験生の受験機会を拡大し、選択の幅を広げるため。また、学生が教職に就くために求められる知識や経験等を、効果的・意欲的に学べる機会を創出するため」(京都市)など、人材の確保や受験機会の増加、受験者の負担軽減などを挙げる自治体が多かった。
一方で、実際の3年生の受験者数や通過倍率には自治体間でかなりばらつきがあった。
受験者数については、大学から推薦のあった人のみを対象とした特別選考としている自治体や、校種を小学校だけに絞っている自治体などもあるため、単純比較はできないものの、最少は12人、最多は東京都の3133人だった。倍率は全員が通過したと思われる1.0倍から、最も厳しいもので4.6倍まであり、3年生の受験者に対する自治体の思惑の違いも垣間見える。
この自治体へのアンケートと合わせて、10月4~18日に、教育新聞の読者で、今年の教員採用試験を受験した人を対象にしたウェブアンケートも実施。61人が回答した。
大学3年生から1次試験を受けられるようにした自治体の取り組みについて、「あなたが3年生だったら、受験してみたいと思いますか」という問いに対し、85.0%が「思う」と答えていた(=グラフ②)。
その理由についての自由記述では、「チャンスが増えるから」や「教育実習のない3回生で受験できることに魅力を感じるから」「試験の雰囲気を感じ取れて、模擬練習のようになるから。また合格できれば、大学最後の年が楽になるから」など、負担を分散させたいという思惑や受験チャンスの増加を挙げる声が多く、受験者のニーズとも合致しているようだ。
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試験日程を従来よりも1カ月程度前倒しすることが文部科学省から求められた、今年の教員採用試験。教育新聞では【検証!教採改革】と題した企画を明日から掲載し、これらのアンケートなどから読み取れる課題にクローズアップする。