昨年、ICT先進国であるスウェーデンが2023年から計画していた新しい教育のデジタル化戦略について、脳科学者や小児科医などからの強い反対に遭い廃案に追い込まれたという報道があった。
反対理由はデジタル機器を使うことによって集中力の欠如、読書量の減退および読解力の低下、幼児期からの使用による言語、コミュニケーション、さらには運動能力の発達への大きな支障といったデメリットがあるというものだ。国際読書力調査(PIRLS)で近年、読解力の数値が低下していることも影響しているようだ。
一方、オーストラリア議会で16歳未満のSNS使用を禁止する法案が可決され世界中に衝撃を与えている。国内では政治家や芸能人のスキャンダルをスクープすることで有名な大手週刊誌が何週にもわたり「デジタル教育で日本人がバカになる!」と銘打ち、特集を組んだことも話題を呼んでいる。
民主主義の根幹である選挙の世界にもSNSが入り込み、何が真実なのか人間不信に陥る時代である。こうした報道を耳にするたび、教育関係者ならずとも多くの人は子供たちの未来に不安を感じているはずだ。
デジタル機器やSNSといったすでに社会に根付いている万能の機器を子供の手から離すことは果たして可能なのか。インターネットの一般的な普及は1990年代からと言われているが、それ以降子供たちへの影響については今後さらにさまざまなデータが提供され多くの議論が交わされることだろう。教育における「不易と流行」とは何かを今問い直す時期に来ている。