不登校の児童生徒や保護者への支援の在り方を巡って幅広い関係者が意見を交わすシンポジウムが12月12日、オンラインで開かれた。不登校の子どもたちを支援するNPO法人をはじめ国・自治体の関係者や保護者、大学教授などが一堂に会し、不登校に関する全国調査の分析結果や自治体の先進的な事例が報告されるとともに、行政と当事者のニーズのギャップなどを巡り意見を交わした。
同シンポジウムを主催したのは、不登校の子どもたちの支援に取り組むNPO法人「多様な学びプロジェクト」。はじめに同法人の生駒知里代表理事が、不登校の当事者・家族の実態や支援ニーズを調べるため昨年度に実施したアンケート調査などの分析結果を報告した。
この中で生駒代表理事は、「不登校の子どもにとって嫌だったこと」は「登校強制・刺激・干渉など」(44%)が最も多く、逆に「うれしかったこと」は「不登校を認められる・理解される」(34%)が最も多かったことを紹介し、不登校に対して受容的な対応がいい結果につながっていることを報告した。また、不登校への理解者がいる子どもの方が、不登校経験を前向きに捉えていることが多いとのデータも示し、「当事者への支援は、形だけの再登校支援ではなく、休養と自己回復、当事者理解に基づいた、寄り添った支援が必要ではないか」と強調した。
また、フリースクールと連携した自治体の先進的な事例が報告された。このうち長野県こども若者局次世代サポート課の馬場武親課長は、今年4月から全国に先駆けて始めた「信州型フリースクール認証制度」を紹介した。この制度は、教員免許取得者の配置など一定要件を満たすフリースクールを認証し、人件費や学びに必要な経費について200万円を上限に2分の1を補助する制度で、今年11月末現在で30カ所を認証したことを明らかにした。馬場課長は「施設の賃貸料や光熱費などを対象にしてほしいと求める声があり、どこまで対応できるか検討している。フリースクールの皆さんと共に頑張りたい」と述べた。
このあと会場では、生駒代表理事をはじめ国や自治体担当者、保護者、大学教授など9人によるパネルディスカッションが行われた。この中で、行政が設置した居場所が「学習ありきで子どもが望むスペースになっていない」との視聴者からの声が紹介されると、認定NPO法人「フリースペースたまりば」の西野博之理事長は「行政とのギャップは指導ありき、支援ありきで始まりがちで、良かれと思って大人が差し出す支援が子どもを追い詰めてしまうことがある。ハードルを低くして、まずそこに行ったら子どもを丸ごと受け止め、たっぷり休養できる、そうした場所にしていく必要がある」と指摘した。
保護者の立場で参加した「ふとうこうカフェinせんだいみやぎ」の武山理恵代表理事は「情報提供は大切だと思うが、例えばクラス内に不登校の子がいる親と連絡を取りたくても、個人情報だからと学校から教えてもらえない。親同士がつながる取り組みがあるといいと思うのだが」と問題提起した。これに対して奈良女子大学研究院の伊藤美奈子教授は、スクールカウンセラーとして通う高校で保護者が誰でも通える食堂が定期的に開かれている事例を紹介し、「不登校の生徒を持つ親同士でLINEを交換したりお茶をしたりしているようで、こうした緩やかなつながりの場を設ける方法もあると思う」とアドバイスした。