(鉄筆)TIMSSの結果

(鉄筆)TIMSSの結果
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 国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)の結果が先日公表され日本は平均得点において算数・数学、理科ともに前回に引き続き世界トップグループに位置した。また、数学・理科は「日常生活に役立つ」と答えた割合が前回比較で増加した。その点では汎用的能力の育成を目指す現行の学習指導要領の成果が表れていると言える。

 一方、「数学を使うことが含まれる職業につきたい」と思う子供は22%で国際平均の48%と開きがあった。理科も同様の数値であり子供たちの理系離れの深刻さを浮き彫りにした。

 そんな折、今井むつみ氏が著した「学力喪失」(岩波書店)を拝読した。認知科学者である同氏が小・中学生の算数・数学文章題のつまずきに端を発し、学習意欲そのものを失っていく子供たちの姿を何とかしようと考え執筆したものである。

 その中で例えば「3分の1と0.5はどちらが大きいか?」という問題に対する多くの誤答から、同氏はかなりの数の子供が分数や小数の概念的な理解ができていないと分析。さらに知識は遊びや体験の中から発見・習得していくものでありそれが本来子供が持つ「学ぶ力」であるとした上で教師や親の「学び」と「知識」についての誤認識がそれを妨げていると結論付けている。

 ある調査によれば、理系の研究者が研究者になった動機は、理科の授業での実験や教師とのコミュニケーションなどが上位を占めるという。初中教育における教師による「生きた知識」の授業がいかに大きいかを示すデータである。引き続き先生方の努力に期待したい。

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