今国会で初めて導入された、来年度予算案について省庁ごとに質疑を行う「省庁別審査」が2月6日、衆院予算委員会で行われ、文部科学省の予算を巡って質疑が交わされた。この中で津村啓介議員(立憲民主党)が、執行率の低い道徳予算を見直して教職員などの増員に充てるべきだと求めたのに対し、阿部俊子文科相は「使い勝手を向上して、しっかり活用されるよう取り組みたい」と理解を求めた。また、与野党間で協議が行われている高校の授業料無償化を巡って、文科省が3つのパターンについて試算を示し、最大で約4000億円が追加で必要になることを明らかにした。
「省庁別審査」は、国会の予算審議の在り方を変えようと野党側の提案で初めて導入され、今月5日から3日間、衆院予算委で行われている。文科省予算を巡っては6日午前に実施され、与野党9人の議員が質疑を行った。
この中で津村議員は、約3億円が計上されている道徳教育に関する予算の執行率が6割前後にとどまっていると指摘。「打ち切りを含む見直しを検討して、教職員や学校支援員の増員に充てるべきではないか」と迫った。
この予算は「よりよい生き方を実践する力を育む道徳教育の推進」事業として、地域の特色を生かした道徳教育の実践や、いじめの未然防止につながる取り組みなどに充てるため、毎年約3億円が計上されている。
これに対して阿部文科相は「執行率の課題があることは事実だが、学校教育全体を通した幅広い道徳教育を対象に、使い勝手を向上する見直しを図っている。子どもたちの自己肯定感の向上などに寄与するものであり、しっかり活用されるよう取り組みたい」などと述べ、理解を求めた。
また、津村議員は、毎年全数調査で実施されている全国学力・学習状況調査について、「3年に1度の抽出調査とすることで、大幅な予算縮減と教員の負担軽減につながる」と指摘するとともに、一部オンライン化の前倒しなどで相当の縮減ができるのではないか」と質問した。
これに対して阿部文科相は、前倒しの実施は困難との見通しを示した上で、「一層効率的になるよう、現場の準備を支援したい」と述べるにとどまった。国語や算数・数学の教科を毎年実施していることについては、「読み書き計算など日常生活やあらゆる学習の基礎となるものであり、毎年実施している。生徒一人一人の課題を把握して学習指導に生かす重要性は一層高まっており、調査の改善充実への検討を図りたい」と答えた。
一方、高校の授業料無償化を巡る議論が活発化する中、三谷英弘議員(自民)は、所得制限を撤廃した場合に必要となる予算の見通しを質問した。
これに対して望月禎初等中等教育局長は、3つのパターンについて機械的に試算した追加予算額を示した。現行の高校等就学支援金制度で、所得制限なしで全ての高校生に上限支給額(公立11万8800円、私立39万6000円)を支給した場合、約3000億円が追加的に必要となると説明。
また、現在、支援金を受給していない年収910万円以上の世帯も含めて全ての高校生に基準額の11万8800円を支給する場合は約1000億円、さらに私立高校の生徒への支給上限額を現在の全国の平均授業料の約45万円として、全ての生徒に上限額を支給する場合、約4000億円が追加的に必要となるとの見通しを示した。