女子の進学を阻むジェンダーギャップ 性差の壁を伝える白書公開

女子の進学を阻むジェンダーギャップ 性差の壁を伝える白書公開
左から、記者会見で白書を公表した学生団体#YourChoiceProjectの川崎さん、長尾さん、古賀さん
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 大学進学を巡って、女子は男子に比べ「地元に残ってほしい」と期待されやすく、難関校に占める割合は少なく、教育投資額や自己評価も低い傾向にある――。そんなジェンダーギャップの実態について網羅的にまとめた「大学進学におけるジェンダーギャップ白書」を、NPO法人「#YourChoiceProject」がこのほど公開した。同NPOは教育分野のジェンダーギャップ解消を目指す学生団体。事務局長の古賀晶子さんは、学校現場でのステレオタイプ(ジェンダーにまつわる思い込み)の緩和に向け「地方から始めて、ゆくゆくは全国の教育委員会に白書を配布したい」と力を込めた。

 白書は全7章・32ページで構成。同NPOのホームページでダウンロード可能だ。白書では大学進学率の地域間格差をはじめ、女子の比率が2割台にとどまる「難関大での女子比率の低さ」、女子に比べ男子の方が5万円ほど多い「教育費の男女差」、「浪人における女子割合の低さ」といった実態に言及。これらの背景にある「男性が働き女性は家事をする」などの、社会で長く共有されてきたステレオタイプの問題についても解説を加えた。これらの影響により、とりわけ地方の女子学生の間で、志望校への合格可能性に対する自己評価が低いことも指摘している。

 同団体で代表を務める川崎莉音さんは「ジェンダーギャップ解消に向けた活動を続けていく中で、この問題に関心の高い人にしか情報が届いていないもどかしさがあった。論点を包括的に、分かりやすく把握できるものはなかったため白書にまとめた」と白書作成の経緯を語った。

 同団体はまた、子どもの進学先選びに関する保護者の意識について、通信教育大手「ベネッセコーポレーション」との共同調査の結果も2月5日に公表した。調査は2024年9月にインターネット上で実施、5739人から回答を得た。

 それによれば、保護者に「子どもの大学進学先に重視する特徴」を尋ねたところ、「研究内容や学部学科」が男子17.0%、女子16.5%で共に最高。一方、男女差が一番大きく表れた項目は「大学のある場所」で、男子の9.8%に対し女子は12.0%となり、女子の方が高かった。続く「大学の就職実績」は反対に、男子7.1%に対し、女子は6.2%にとどまった。

 この結果について代表の川崎さんは「女子学生の保護者が『大学のある場所』をより重視する傾向にあるのは、『女子には地元に残ってほしい』という気持ちの表れ。一方、男子学生で『大学の就職実績』を重視するのは、女子に比べ、将来により大きな収入を期待していることが関係しているのだろう」と分析した。

 これらの結果を受け、同団体の長尾すみれさんは「学びたい人が意欲をそがれることのないよう環境を整えることは、教育の重要な役割」と強調。そのため同NPOでは今後、教員向けの教材作成や研修の実施に取り組むとしている。前出の古賀さんは「例えば進路指導の際、ジェンダーギャップを把握する基礎資料にするなど、学校現場で白書を活用してほしい。研修については25年度中に各学校にアプローチしたい」と意気込みを語った。

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