(鉄筆)高校の授業料無償化

(鉄筆)高校の授業料無償化
【協賛企画】
広 告

 保護者にとって果たして喜ぶべきことなのだろうか。国会で論議されている高校の授業料無償化問題である。日本維新の会が提唱し公明党も賛成、自民党が難色を示していたこの問題についに決着がついた。家庭の所得制限をなくし私立には一律年間45万7000円を支給するという内容だ。

 無償化が実現するとどうなるか。まず考えられることは「公立校離れ」である。公立校の最大の魅力である「安い授業料」がなくなる。入学者の減少が見込まれ設置する自治体は統廃合を含めた高校の再編を考えるだろう。それが公立校の教育力低下、学校の荒廃といったお決まりのパターンをたどるのにさほど想像力はいらない。先行する大阪府では府立高離れが起き始めている。

 違う見方もある。無償化により浮いた家庭の教育費を塾や家庭教師の費用に転化する家庭も増え新たな教育格差が生まれる。私立校への支援額を引き上げることで私立校の授業料の値上げを引き起こすという指摘もある。

 さらに、公立校の入試教科が国語・数学・英語・社会・理科に対し、私立校は国語・数学・英語の3教科であることから、社会・理科に対する生徒の学習時間が減り当該教科に関する学力が低下することも想像に難くない。

 この問題について、経済紙が経済学者47人にアンケート調査を実施、70%が無償化に反対という結果が出た。経済界からもその効果には黄信号を出している。その費用を低所得家庭の財政支援と教員給与の増額に回した方がよいという同紙のコメントには教育の視点からも大賛成である。

広 告
広 告