第13期中教審が始動 橋本新会長「各分科会の議論に横串を」

第13期中教審が始動 橋本新会長「各分科会の議論に横串を」
中教審の新会長に選ばれた橋本氏=撮影:山田博史
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 新たに13人のメンバーを加えた第13期中教審の初の総会が3月17日、文部科学省で開かれ、新会長に橋本雅博氏(住友生命保険相互会社取締役会長・代表執行役、日本経済団体連合会教育・大学改革推進委員長)が選任された。橋本会長は就任にあたって「今後の教育の在り方を大きく左右する重要な諮問があり、各分科会・部会の審議はかなり専門的になるが、総会で横串を刺して接続や連携に取り組みたい」などと述べた。第13期中教審では、次期学習指導要領の改訂を見据え、新たな時代にふさわしい教育課程や教員養成の在り方を巡る審議などが主なテーマとなる。

 第13期中教審の29人の委員は今月10日、阿部俊子文科相から任命された。新たに任命された委員は13人で、前回より女性が2人増えて、14人と約半数になった。また、高等教育の在り方を巡る具体的方策の議論が始まることを見据え、大学の学長らが5人(慶應義塾大学、山口県立大学、東北大学、桐蔭横浜大学、金沢大学)任命された。

 17日の総会は冒頭、非公開で会長の選任が行われ、橋本氏が選任された。橋本会長はあいさつに立ち、「予測困難な時代が続いている中、中教審として何十年先という未来を見据えつつ、多様な関係者の意見に耳を傾けながら丁寧に議論を進めたい。各分科会や部会の審議はかなり専門的になるが、総会で横串を刺してそれぞれの接続や連携に留意したい。また、中教審の審議に広く社会の関心を持ってもらうことも大変重要であり、審議の過程プロセスを分かりやすく発信することも必要だ」と述べた。

 続いて文科省の担当者が主な審議事項について説明した。第13期の中教審では、学習指導要領の次期改訂に向けた議論が大きなテーマとなり、初等中等教育分科会ではこれからの時代にふさわしい教育課程や教員養成の在り方などが審議される。また、大学分科会では「知の総和」の向上に向けた新たな質保証・向上システムの構築が検討され、生涯学習分科会では、地域コミュニティーの基盤を支える社会教育の在り方と推進方策などが主なテーマとなる。

新メンバーを加えて開かれた第13期中教審総会=撮影:山田博史
新メンバーを加えて開かれた第13期中教審総会=撮影:山田博史

 総会ではこの後、各委員が審議を始めるに当たって、それぞれ意見を述べた。新委員の桑原悠委員(新潟県津南町長)は「人口減対応や人材育成、産業育成について取り組む中で、地方における教育は都市部と異なり、教育のチャンスがかなり限定的であると感じている。一方、オンライン授業などテクノロジー的には緩和できる要素が出てきているはずだ。ダイバーシティの浸透や業種の幅も広がる中で、これまでより教育の定義は幅広くなっているはずで、特にテストの点や偏差値の重要性以上に、個々の生活や環境に応じて学ぶことをサポートすることの重要性が増してきていると感じている」と述べた。

 秋田喜代美委員(学習院大学文学部教授、東京大学名誉教授)は「公教育の在り方を問い直す中で、特に不登校が34万人に上る問題は学校教育の改善と共に社会教育士に支えられていることも大事であり、初等中等教育と生涯学習局の両方に関わる課題となっている。それぞれの所管の中の議論を超えて橋本会長が話したように、総会ではぜひ横串を刺して議論する機会を持つことも重要ではないかと思う」と指摘した。

 新委員の岩本悠委員(一般財団法人地域・教育魅力化プラットフォーム代表理事)は、高校無償化に触れて、「私立(高校)の授業料無償化や国立大学の授業料に関する話が出ているが、考え方に一貫性があるとは見えないという声が教育関係者から聞こえている。本来の政策目的である質の高い教育の実現と教育格差の是正に対して、どれほど効果があるのかということをしっかりと見て、本当に政策効果があるところに財源を効果的に使えるようにしていくことが必要ではないか」と問題提起した。

 最年少の31歳で新たに就任した廣津留すみれ委員(バイオリニスト、国際教養大学特任准教授、成蹊大学客員准教授、大分市教育委員)は文化芸術分野の教育に触れ、「AI時代に重要な鍵を握るのは文化芸術の力だと信じている。生の音楽や芸術に触れたり人と協力しながら音楽や芸術の作品を一緒に作り上げたりといった活動を、家庭の経済的なバックグラウンドにかかわらず体験できるのは、やはり学校だ。文化面も含めて国として強化することで、詰め込み教育では育てることができない人間性を豊かにすることができるのではないかと期待している」と述べた。

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