つくばで「科学の甲子園」 初出場校生徒「人生で一番楽しい100分間」

つくばで「科学の甲子園」 初出場校生徒「人生で一番楽しい100分間」
実技競技で実験に取り組む出場校の生徒=撮影:水野拓昌
【協賛企画】
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 高校生や中等教育学校後期課程、高等専門学校の生徒たちがチームで科学分野の課題に挑む「科学の甲子園」全国大会が3月21~24日、茨城県つくば市のつくば国際会議場、つくばカピオで開かれ、東京都代表の都立小石川中等教育学校が初の総合優勝を飾った。総合2位は諏訪清陵高校(長野・県立)、3位は守山高校(滋賀・県立)だった。

 科学の甲子園は科学技術振興機構が主催し、2012年から開催している。大会スローガンは「広げよう科学の輪 活かそう科学の英知」。

 第14回の今大会は各都道府県の代表選考に717校8158人がエントリー。全国大会には47都道府県の各代表校が出場し、各校は1、2年生6~8人でチームを組み、筆記競技と実技競技3種目に挑んだ。筆記は各校6人が化学や地学、生物、物理、数学、情報の分野から出題される問題に臨み、実技は3~4人のチームで課題に当たった。各競技の成績を合計して総合優勝を決める。

 つくば国際会議場で開会式、オリエンテーション、筆記競技が実施された21日に続いて、22日はつくばカピオで物理分野、生物分野、総合の実技競技が行われた。実技競技では実験、考察を通して問題を解いていく。

 物理分野の実技では、スマートフォンの中で歩数計などさまざまなアプリケーションに使われている加速度センサーの特性に挑んだ。制限時間100分間の終了間際には各校とも、解答用紙にびっしりと計算式を書き込んでいた。

 生物分野の実技は「世界最大のウイルスを探せ!」というテーマで実施。DNAを増幅させるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の方法を使い、サイズが極端に大きいパンドラウイルスを増幅させるミッション。モニターで示された5つの環境(海水、沼の泥、水道水、コップにためた雨水、河川敷の土壌)から採取されたDNAサンプルが入ったマイクロチューブを3つ選び、PCRの手順で増幅させる。

 PCRは98度、72度、55度の3つの温度を維持することが要点だが、これを自動で温度設定するサーマルサイクラーを使わず、沸騰した湯と水を混ぜて手動管理する。チームワーク、役割分担がポイントになる。

 反応の手順を繰り返した後、ゲルの小さな穴にDNAサンプルを注入し、電気泳動で分離。DNAサンプルには蛍光色素が入れてあるのでLEDの光を照射すると、DNAが観察できる。暗箱を作ってタブレット端末で撮影し、DNA増殖に成功したか確認するという課題だ。

 撮影に成功、ガッツポーズで喜びを表すチームもあった。初出場の三重県立四日市南高校は撮影でウイルス増殖を確認できず、生徒たちは肩を落としたが、終了後、2年生の細川奨真さんは「悔しかったが、何よりも楽しめた」と笑顔。同じく2年生の和田光稀さんは「今までの人生のどんな100分間よりも、ためになる楽しい100分間だった」と言い切った。

 同校は自然科学部を中心に他部の生徒も加えてチームを組み、県代表選考では実技で好成績を収め、全国大会初出場を勝ち取った。2年生の北澤璃久(りく)さんは「県内には他にも強い学校があって、出られるとは思っていなかった自分たちが全国大会に出られ、すごくうれしかった。問題は難しかったが、貴重な体験ができた」と話した。物理分野の実技競技に出場した2年生の山本温太(はるた)さんは「参加できて楽しい。実技は学習してきたことを応用でき、普段はできない実験だった」と振り返った。

 総合の実技競技は、回転の力で速度を制御するフライホイールを使った手作り車体のレース競技。指定された走行時間に近いタイムを目指す制御レースと積載物を落とさないように安定走行を目指すバンプ(障害物)レースを実施した。この競技には、科学の甲子園ジュニア全国大会で優勝した茨城県の中学生チームが特別参加した。

 今大会の初出場校は10校で、四日市南高校の他は、花巻北高校(岩手・県立)、致道館高校(山形・県立)、樹徳高校(群馬・私立)、市川学園市川高校(千葉・私立)、静岡高校(静岡・県立)、東海高校(愛知・私立)、守山高校(滋賀・県立)、長田高校(兵庫・県立)、大手前高松高校(香川・私立)。一方、岐阜高校(岐阜・県立)と宮崎西高校(宮崎・県立)、ラ・サール高校(鹿児島・私立)の3校は全14回大会連続で県代表となった(20年の第9回は全国大会中止)。

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