第1回 学校リスクは「日常」に潜む

第1回 学校リスクは「日常」に潜む
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 学校で起きる深刻なトラブル──SNSでの炎上、保護者からの激しい苦情、いじめ対応の遅れ、集中する学校への批判的なメディア報道──もしかすると、どこか他の学校の出来事だと感じている先生方は少なくないかもしれません。しかし、全国の学校現場を支援してきた私の実感として言えるのは、「うちの学校には関係ない」という思い込みこそが、最大のリスクであるということです。

 リスクは、日常の静かな風景の中でじわじわと育っていきます。例えば、教員の無意識な一言がSNSで切り取られて拡散されたり、保護者の違和感が蓄積して突然のクレームに発展したり、いじめの小さな兆候を見逃して重大事態につながったり…。それらは、ある日突然に起きるのではなく、日常の延長線上で静かに進行していた「未然に防げたはずの出来事」なのです。

 特に今は、学校が常に「世間の視線」にさらされている時代です。かつては校内で完結していた問題も、保護者グループやSNS、メディアなどを通じて、瞬く間に外部へ広がります。

 こうした時、平時から備えができていない学校では、対応に追われるばかりでさらに信頼を損なうという悪循環に陥ってしまいます。

 私が代表を務める「学校リスクマネジメント推進機構」では、全国の学校と連携しながらこうした危機への予防策や対応支援に取り組んでいます。現場での支援を通して見えてくるのは、「リスクが顕在化してから対応する学校」と「平時から備えを持つ学校」とでは、最終的な結果に大きな差が生まれるという現実です。

 マニュアルや研修があるだけでは、十分とは言えません。教職員同士の認識のズレ、保護者との関係性、報告体制の不備…。こうした「見えにくいリスク」への気付きと共有こそが、真の備えにつながります。そのためには、日常的な訓練や共通言語の形成、そして時には外部の第三者による客観的な視点も不可欠です。

 本連載では、全10回にわたり、実際に学校現場で起きた具体的なトラブル事例をもとに、なぜ問題が起きたのか、どうすれば防げたのかを掘り下げていきます。先生方が日々の教育活動に安心して取り組めるよう、現場で生きる「リスクマネジメントの実践知」をお届けしていきます。

 

【プロフィール】

宮下賢路(みやした・けんじ) 学校リスクマネジメント推進機構代表。「安心感」と「解決策」を「迅速」に提供する学校危機管理コンサルタント。企業の危機管理支援を経て、学校分野に特化して20年。SNS炎上、保護者対応、いじめ対応、マスコミ対応まで幅広く支援。文部科学省調査研究事業、独立行政法人教職員支援機構(NITS)、教育委員会などでの講師実績多数。相談者の問題に対し、弁護士、元警察官幹部、元校長らと共にその解決に効果がある専門分野を選定・アレンジ。これに蓄積されたノウハウや人脈を融合しながら教職員を全方位的に支援している。

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