第4回 いじめ対応で見落とす視点

第4回 いじめ対応で見落とす視点
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 いじめに関するトラブル支援の現場で、私が最も多く聞くフレーズの一つが「ここまで深刻だとは思っていなかった」です。現場の教職員に悪意があったわけではありません。むしろ、子どもたちに丁寧に寄り添いながら、できる限りの対応をしていたケースがほとんどです。それでも、事後的に「重大事態」と認定され、保護者やメディアから厳しい指摘を受けることがあるのです。

 なぜ、そうした事態が起こるのでしょうか。それは「学校内で見えている情報」と「子ども本人が感じている深刻さ」にズレがあるからです。いじめの被害を受けている子どもは「大人に心配をかけたくない」「状況を悪化させたくない」という気持ちから、実際の被害よりも軽く伝えることがあります。それとは逆に、子どもが保護者に対して「自分に都合のよい形で」話を伝えてしまい、事実以上に深刻な内容として受け取られてしまうこともあります。

 このようなケースでは、保護者は子どもの言葉を信じて憤り、学校側から「確認中」「一方的ではない」と説明を受けても感情的に受け入れられず、対応が一気に難しくなることがあります。これは、「過小評価のリスク」と同時に、「過剰反応のリスク」も存在するという、いじめ対応の二面性を示しています。

 特に現在のいじめは、表面化しにくい「関係性の切断型」「ネットでの攻撃」「無視・排除」によって精神的ダメージを与えるのが主流です。SNSやグループLINEなど、学校の目が届きにくい場面で進行していることが多く、「見えないいじめ」への対応力が求められている時代だと言えるでしょう。

 私たちが学校現場で提案しているのは、「グレーな段階で動ける体制」を整えておくことです。「断定できないから動けない」のではなく、「疑いがある段階で組織的に検討し、記録し、共有する」ことが、子どもと学校を守る最善の備えになります。

 また、判断根拠の整理、中間報告、複数視点の導入など、「透明性と丁寧さ」のある対応が信頼構築につながります。いじめは「問題」であると同時に、「学校の組織文化の鏡」でもあります。感情に流されず、かといって後手にも回らない。そんな対応力が今、学校現場には求められているのです。

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