学校における危機対応では、「最初の判断ミス」が事態の深刻化を招く大きな要因になります。対応の遅れや説明の不備により、当初の被害が拡大したり、新たに別の被害が生じたりする、いわゆる「二次被害」です。
初動で最も大切なのは冷静な事実確認と、その延長線上にあるリスクを想定して対策を講じることです。もちろん、在校生の安全と安心を第一に考えるべきですが、それに加えて教職員のメンタルケアや保護者・地域住民への配慮も重要です。危機対応の目的は、すでに生じている影響や今後予想される影響を最小限に抑えることです。そのための手段を的確に考え、組織として実行していくことが求められます。
特に注意したいのが、事実確認が不十分なまま動いてしまうことです。例えば、保護者からの訴えに焦って謝罪を急いだ結果、「学校が全ての責任を認めた」と受け取られてしまうことがあります。謝罪は、「何に対しての謝罪か」を明確に伝えることが肝心です。不快な思いをさせたこと、説明が不十分だったことなど、限定的に伝えることで誤解を防げます。
逆に、学校側の都合で情報を出し渋ると「隠しているのでは」と不信感を招きます。だからこそ、初動段階で「何を言うか」と同じくらい、「何をまだ言わないか」を整理しておく必要があります。その際には、「聞かれなくても話すべきこと」「聞かれたら話すこと」「聞かれても話せないこと」をあらかじめ分類しておくことが重要です。話せない情報がある場合は、その理由も合わせて説明することで、誤解や不信を防げます。
また、外部からの問い合わせや保護者会・マスコミ対応に備え、想定問答集(Q&A)を事前に作成し、説明担当者によるリハーサルを行っておくことも効果的です。情報が錯綜(さくそう)する中でも、学校として一貫した説明ができる体制を整えておくことが、信頼の維持につながります。
ここで重要なのは、「何を伝えるか」と同じくらい、「どのように伝えるか」が大切だということです。たとえ正しいことを話していたとしても、伝え方を誤れば、真逆の意味として受け取られてしまうこともあります。だからこそ、事前に伝え方のリハーサルをしておくことが必要なのです。
ここをおろそかにすると、どのような準備をしても二次被害が発生しやすくなってしまうのです。