養成部会が採用の議論に着手 採用試験の共同実施も論点に

養成部会が採用の議論に着手 採用試験の共同実施も論点に
採用・研修の議論に入った教員養成部会第150回会合=オンラインで取材
【協賛企画】
広 告

 諮問を受けて、多様な専門性を持った質の高い教職員集団の形成を加速するための方策を検討している中教審の教員養成部会は5月23日、第150回会合を開き、教師の質を維持・向上させるための採用・研修に関する議論に着手した。採用では、今後の教員需給の動向を見極めつつ、教員採用試験の一次試験を共同実施することの意義や課題も論点に盛り込まれている。委員からは、民間から教員への中途採用の強化を求める意見などが出た。

 教員採用試験は、選考日程の早期化や複数回の試験の実施、特別選考の拡充などの動きが各地で広がっている。今後、中学校での35人学級の導入をはじめとする教職員定数の改善による採用の増加が期待される一方で、児童生徒の減少による教職員定数の自然減や、退職者数の減少も予想される。生産年齢人口の現象による人材獲得競争の激化なども含め、教員の需要と供給の動向を念頭に起きつつ、今後の教員採用を考えていく必要がある。

 そこで、教員養成部会では、採用に関して、人材獲得に向けて教職に関心を持つ人の裾野を広げる取り組みや、受験者確保の観点からの教員採用試験の改善、教員採用試験の一次試験を共同実施する場合の意義や課題などの検討を行う。

 そのキックオフとなったこの日の会合では、教員採用試験を実施している教育委員会と文部科学省による、一次試験の共同実施に向けた検討会議の状況が報告された。

 それによると、共同実施の効果として、二次試験で人物重視の丁寧な選考が可能になることや、受験者数の増加などが見込めるとされ、実施方式として、第三者機関が作問から開催まで一括して処理する「統一試験方式」と、第三者機関が作成した問題を活用して各教委が試験を実施する「共通問題配布方式」が想定されていることが紹介された。

 また、秋採用の実施や多様な選考枠の導入など、教員採用試験でさまざまな工夫を行っている佐賀県の取り組みについて、甲斐直美臨時委員(佐賀県教委教育長)が発表した。

 甲斐臨時委員は、小中学校の受験率が大幅に減少していることや、複数の自治体から内定を受けている受験者の採用辞退が増えていること、試験問題の作問の負担が大きいことを課題に挙げた。

 その上で、一次試験の共同実施は、試験問題の質と量の均一化や、作問に関する人的負担や経費削減につながるなど、自治体単独で行うよりもメリットは大きいが、検討事項もあると指摘。

 「将来的に統一試験方式となった場合、一次試験の合格者は全国各地の二次試験を受験することができるとした場合、各自治体で現在よりも採用予定者を見込みにくくなる可能性があるのではないかと懸念する。本県では秋選考を実施しているが、こうした複線化への対応についても検討が必要と思われる」との見方を示した。

 教師人材の確保について、戸ヶ﨑勤委員(埼玉県戸田市教委教育長)は「今後は就職氷河期世代の採用を鑑み、教員の中途採用の拡大や、民間企業に在籍しながら学校に勤務する形態も視野に入れていく必要があるのではないか。さらには、高校生が教職の魅力に直接触れる体験を積極的に提供するなどの、早期のリクルート戦略を進めていくべきだろう」と提案。

 教員採用試験の一次試験の共同実施については、「作問作業は教員の研修の面では大変勉強になるが、負担は相当なものがある。これを機に出題内容を見直すことで、質を向上すべきだ。統一試験方式であれば統計分析が精緻(せいち)化されて、その結果がエビデンスベースでの教員研修や、養成段階の大学教育の改善にも役立つのではないか」と話した。

 橋本雅博委員(住友生命保険相互会社取締役会長、日本経済団体連合会教育・大学改革推進委員長)も「採用で民間と競争するという意味では、中途採用をどう考えるかということも大変重要な問題だと思う。佐賀県の発表でも共同実施の課題に秋採用のことが出ていたが、今後、共同実施を考えていく上でも、中途採用に対して共同実施の試験をどのように位置付けていくかは議論していく必要がある。そのうち中途採用で民間企業と教職の採用が競合することも十分考えられる。しかもそれは、そこまで遠い将来ではない」と強調した。

【キーワード】

教員採用試験 公立学校で正規教員としての任用を希望する人を対象に行われる選考試験で、都道府県や政令市などで毎年実施されている。近年、教員の人材確保が課題となる中で、実施時期の早期化や大学3年生でも一部試験を受験できるようにするなどの改革が行われている。

広 告
広 告