小学校の音楽の授業を参観した時のこと。曲を聴いて思ったことなどを発表する場面だった。子どもたちは挙手をしてそれぞれ述べていたが、うまく言えずに口ごもる子どももいた。見ると黒板の隅の方に形容詞や擬態語が書かれたカードが何枚も貼られていた。
授業後、教師に聞くと、子どもたちは思いがあってもうまく言葉に言い表せないことがあるので授業の中で子どもから出た、うまく表現できている言葉をカードにして掲示しているのだそうだ。言葉での表現が不得手な子どももカードを見て、自分の気持ちや考えを伝えることができるようになるという。
先日、NHKの番組で、自分の気持ちを全て「ヤバい」で表現する若者が増えていること、さらに自分の気持ちを言語化できない若者が闇バイトなど犯罪に手を染めやすいことが報道された。同時に自分の気持ちを言語化するための教育をしている小学校の事例が紹介された。
「令和5年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」から、小学生の暴力行為の発生件数が7万件を超え過去最多となったことが分かった。加害児童数と比べると発生件数が約2万件多く、同じ児童が暴力行為を繰り返していると推測される。
さまざまな原因や背景があり一概には言えないが、自分の思いなどをうまく伝えられないもどかしさを抱え、それが暴力行為という形で表出している可能性もある。このような子どもたちにはじっくりと寄り添い心情を理解するとともに、思いを伝えるすべを身に付けさせることが必要だ。