全国学力調査 平均正答率に加え「多面的な分析資料」公表へ

全国学力調査 平均正答率に加え「多面的な分析資料」公表へ
全国学力調査に臨む小学生=4月17日、東京都内の小学校(代表撮影)
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 全国学力・学習状況調査の調査結果の公表方法などを巡る、文部科学省の専門家会議とワーキンググループ(WG)の合同会議が5月28日、オンラインで開かれ、今年4月に行われた全国学力調査の結果公表について、例年より前倒しして7月中旬から3段階に分けて実施する方針が示された。都道府県・政令市別の分析結果については、8月以降、平均正答率に加えて、正答数・率の分布や学力と質問調査結果の関係など、多面的に解釈できる分析資料も同時に公表する。同省は近く公表内容をまとめた文書を、全国に発出することにしている。

 全国学力調査の結果公表に関しては、都道府県・政令市ごとの平均正答率ばかりが注目されがちなことや、CBT化(コンピューター使用型調査、Computer Based Testing)やIRT(項目反応理論)導入で多様な分析が可能になったことから、調査結果の公表の在り方を巡ってWGが設置されて議論されてきた。

 同日の合同会議で示された「全国学力調査の調査結果の取扱いの改善の方向性(案)」によると、今年4月に実施された全国学力調査のうち、CBT方式で実施された中学校理科ついては、IRTに基づいて分析した結果が提供される。

 生徒には正答数・率に加えて、5段階のIRTバンドで結果を表示・返却(=図1)、バンドの意味を問題の難易度と関連付けて説明する。学校や市町村別には、平均スコアを500としたIRTスコアで表示・返却される(=図2)。

(図1)「中学校理科」のIRTスコアのイメージ(文科省資料より)
(図1)「中学校理科」のIRTスコアのイメージ(文科省資料より)
(図2)「中学校理科」のIRTバンドのイメージ(文科省資料より)
(図2)「中学校理科」のIRTバンドのイメージ(文科省資料より)

 結果返却や公表のスケジュールは昨年度より約2週間前倒しして、①7月14日に学校に個人票などの結果を返却するとともに、全国の平均正答率など実施状況を公表②7月末に全国データに基づく分析結果を公表③8月以降に都道府県・政令市別データに基づく分析結果を公表――の3段階に分けて、国による公表を行う。

 都道府県・政令市別のデータについては、これまで通り平均正答率も公表するが、この結果ばかりが独り歩きしないよう、多面的に解釈することができる分析資料も同時に公表する。

 具体的には、正答率・IRTスコアの分布に目配りした統計表やグラフをはじめ、学力や質問調査結果を組み合わせて分析した散布図、学力や学習状況の特徴などを把握しやすい結果チャート(=図3)、都道府県・政令市別に結果を文章で説明するノートを作成することにしている。

(図3)都道府県・政令市別に示す結果チャートのイメージ(文科省資料より)
(図3)都道府県・政令市別に示す結果チャートのイメージ(文科省資料より)

 WGの議論は今回で終了し、主査を務めた専門家会議の耳塚寛明座長(お茶の水女子大学名誉教授)は「検討を通じて、基本的な公表方法の考え方の整理ができたと考える。調査である以上、都道府県別の平均スコアは引き続き公表することになるが、その他の内容は相当変化があると思っている。何のための調査かをよく考えて、結果を活用してほしい」と述べた。

 全国学力調査の調査結果で新たに公表する分析資料の内容などについては、近く文科省で文書をまとめて全国に発出する。

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