「どうして○○ちゃんだけ、いつも特別なの?」
発達に特性のある子にさまざまな配慮をした際に、他の子から言われた言葉だ。その子が注意されることもなく、いつも優先されているように見えたことで、他の子どもたちが不満を抱き始めた。そのこともきっかけとなり、学級の荒れが加速してしまった苦い経験がある。
クラス全体に対して、説明が足りていなかった。今であれば、保護者の許可を取り、その子がいない場面で丁寧な説明を行うだろう。「みんなと同じように頑張ろうとしていること」「みんなで成長することにはメリットがあること」「全員を同じように愛し、成長させていきたいと思っていること」を子どもたちと向き合い、話していく必要がある。また、頑張りの可視化も大切で、その子が何をどれだけできるようになったのか、その変化を定量的にも示していく。もちろん、他の子どもたちの頑張りも同じように光を当てていく。
困り事をそもそも「問題」と捉える視点のままだと、支援は長続きしない。例えば、落ち着きのない子を「集中できない子」と見なすのではなく、「自分の気持ちをすぐに行動に移せる子」と捉えるリフレーミングの視点は欠かせない。欠点の裏には必ず長所がある。これをまず教師が見ようとし、子どもたちに多く示していければ、個性ある子がクラスにいる意味を理解できるようになる。
例えば、立ち歩きが多いなら教え合いの時間を導入し、立ってもよい場面を意図的につくる。暴言が出る子には、怒りをクールダウンできる安心スペースを用意する(私は教室の後ろに小さなテントなどを用意したことがある)。教師が努力しても限界があるなら、仕組みそのものを見直す柔軟性が求められる。これは当然、他の子にも安心を与える手だてである。
支援が必要な子の隣にしっかり者を配置することはよくあるが、それが丸投げになってはいけない。大人でも難しい対応を子どもに任せるという対応は、保護者の不信感を生む。配置はあくまでトラブル予防であり、クラス全員がさまざまな子と交流ができるようにすることで多様性を学ぶことができる。
上記のしくじりを意識して対処することで、全員が安心して学べる教室に近づく。「全員を特別視している」ことを言葉や行動、システムを通じて絶えず伝えていきたい。