学校教員をはじめとする、子どもと接する業務従事者の性犯罪歴を確認する日本版DBS制度の導入に向け、ガイドライン策定の検討を進めているこども家庭庁の有識者会議「こども性暴力防止法施行準備検討会」が7月22日開かれ、中間とりまとめの素案について、関係する14団体へのヒアリングが行われた。学校教員関係団体からは、学校現場への防犯カメラ設置や教員と児童生徒のSNSでのやりとりの制限などに、さまざまな論点から懸念が示された。
こども家庭庁は年内のガイドライン策定を目指し、秋にも中間とりまとめを示す意向。こども性暴力防止法は施行期限の2026年12月25日を施行日とする方針が固まっており、同時に日本版DBSの運用が開始される。日本版DBSは、子どもと接する機会のある業務従事者に特定性犯罪歴がないか確認する制度で、こども性暴力防止法での再犯対策の核となっている。
この日の関係団体ヒアリングでは、まず、全国市町村教育委員会連合会から、①対象職種について国による一律の分類②相談窓口の保護者、市民への周知徹底③学校現場に分かりやすい調査方法の例示――を要請。このほか、防犯カメラ設置による学校運営への支障を指摘し、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーの犯罪事実確認は都道府県教委による申請方法への統一を求めるなど、8項目について指摘・意見があった。
準備検討会の構成員からは、防犯カメラへの懸念に対して質問が集中した。中間とりまとめ素案では、性暴力などの未然防止策の一つとして密室状態の回避が挙げられており、防犯カメラの活用は義務ではないが、有効な対策として示されている。
同連合会の担当者は「常に監視されているという心理的圧迫につながるという心配がある。十分、検討していただきたい」と述べ、児童生徒の肖像権や設置コストについても指摘した。
構成員からは「防犯カメラは懸念もあるが、安全を考えれば必要な場面もある。心理的な圧迫が少なく、安全に効果的な設置場所について考えがあるか」「街頭の防犯カメラは当初、嫌悪感もあったが、今では防犯上必要性が認められている」「画像確認についてルールを明確にすることで、教員と子どものプライバシーへの懸念も避けられるのではないか」といった意見があった。
同連合会も確認ルールの必要性に関しては認識が一致。ただ、教員と子どものやりとりが常に防犯カメラを意識することになる点への違和感を示した。
続いて、日本私立中学高等学校連合会からも8項目について指摘・意見があり、「不適切な行為として、SNSでの教員と生徒の1対1のやりとりが挙がっているが、働き方改革の中では、効率的なコミュニケーション手段としてSNSでの発信、相談も行われており、生徒が他の人に知られたくない相談でSNSを利用する場合もある。一律の禁止は学校と生徒との関係が事務的になり、面倒見の良さといった点が失われ、教員の萎縮にもつながる」と指摘した。
両団体に続いて、幼稚園、保育所、認定こども園、児童養護施設、学童保育、学習塾、スポーツ関係団体からのヒアリング、意見交換があった。多くの団体が人員不足、なり手不足などの課題がさらに深刻化するという懸念を示した。
また、会議冒頭、こども家庭庁支援局の齊藤馨局長が「教員による盗撮、画像共有事件の発覚以降も、教員や塾講師によるわいせつ事件が報道されている。立場を利用して子どもの心身を傷つけ、人権を侵害する許し難い行為であり、準備検討会での議論を通じて対策を強化していきたい。今後も子どもを守っていくために、さらなるご協力をいただきたい」と発言。こども家庭庁内で藤原朋子官房長を本部長、齊藤局長を本部長代理とする同法施行準備本部を立ち上げたことも明らかにした。