(読者の窓)幻の塔

(読者の窓)幻の塔
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 昭和28年に開校し、本年度70周年を迎える本校は、瑞穂区の中央、瑞穂公園に隣接しています。

 本校校歌「朝日輝く」は、昭和29年、開校1周年を記念し、やさしい言葉で親しみやすい歌をと公募したものをもとに、歌詞を福島佐松先生、作曲を水野久一郎先生に依頼したもので、現在の児童にも昔と変わりなく親しまれています。その校歌には、

「真昼の光 身に浴びて力を競う グランドの マラソン塔と 並び立つああこの豊岡小学校」

とありますが、私が赴任した令和にはマラソン塔など、どこを探してもありません。

 調べると、マラソン塔は、本校の東に位置する陸上競技場にかつて存在したもので、9階建て高さ42メートルの塔は、当時のランドマークでもあったようです。

 マラソン塔は、昭和57年に取り壊されたとのことですので、平成の時代にはすでに存在していませんでした。考えてみれば、本校ができて30年間は、本校校舎とともにありましたが、40年間は、校歌の歌詞の中だけに存在した幻の塔だったのです。

 現在、隣接する瑞穂公園では、2026年のアジア競技大会を視野に陸上競技場の建て替え工事が行われており、スタジアムが巨大なコンクリートのがれきとなり、撤去され、新しいスタジアムの建築が始まっています。

 新しい時代の到来を実感しますし、時代と共に、学校を取り巻く町の様子は変容していきますが、校歌は、開校時の様子をそのまま、次の世代へと伝えています。

 (米山慶志・名古屋市立豊岡小学校長)

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