【主体的に考え、行動する生徒を育む(10)】卒業生たちの言葉

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 卒業を間近に控える高校3年生5人に、これまでの連載に目を通してもらい、思うところを話してもらいました。

 高校2年の秋に編入してきたSさん。「公立の進学校から来た私から見ると、自由の森の生徒って主体性があって、公立高であれば『超個性的』と言われるような人ばかりだと感じた。こんな世界があるんだ、と驚いた」と当時の印象を教えてくれました。これまでの学生生活と、大きなギャップがあったのでしょう。当学園での体験を元に、彼女は小学校の教員を目指して進学する予定です。将来、どういう教師になるのか楽しみです。

 「主体性って教わったという感覚がないなあ」と言うのはD君。「やりたいことを素直にやらせてもらった。中学から自由の森に通い、自由にいろいろなことをやっていいんだと学び取った」と振り返ります。確かに、主体性は教えるものではなく、自らつかみ取るものです。誰かに促されて身に付くものではありません。

 R君は、面白いことを提言します。「『自分』を主語にして語る」こと。得てして教師は「学校」や「先生」を主語にしがちです。もちろん学校は組織ですから、組織としての意思決定はあるでしょう。しかし子どもの心に届くのは、その人自身の考えをくぐった言葉だと思います。

 Tさんは、まだ自分の進む道が明確に見えていないことに少し悩んでいる様子です。好き嫌いの判断はついても、主体性について問われると「自分にはまだ備わっていないなあ」と感じるそうです。連載原稿を読んで寂しくなったと、やや悲観的に語ります。

 ですが、やりたいことが明確なら主体的かと言えば、必ずしもそうとは限りません。むしろ自分の輪郭や方向性が見えない時間を過ごすのも、大事な学びでしょう。

 最後に、当学園の卒業生で、現在歌手や俳優として活躍する星野源が、2010年度の学園ガイドブックに寄せた言葉を紹介します。「自由の森では勉強を頑張っている子もいたし、学校行事に積極的に取り組んでいる子もいた。好きなことをがむしゃらにやっていいんだ、っていう空気がすごく好きでしたね」彼は、自由の森を「一生懸命をちゃかさない」環境だと感じていたそうです。そのような環境は一朝一夕でなく、一つ一つの実践の積み重ねによって形成されたものです。

 学校とはいわば、子どもたちが育つ畑です。教育関係者がなすべきは、子どもたちの育つ生命力を信じて、豊かな畑の土壌をつくり、耕すことではないかと思います。

(おわり)

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