子どもアドボカシーのよりどころは、「子どもの権利条約」第12条の意見表明権である。それは次のようなものである。
第1項は「意見を表明する権利」を規定している。これは、晩御飯のおかずやお小遣いの額、門限、家族旅行の行先、休日の過ごし方などの身近なことから、就学する学校や進路、治療や手術、虐待で保護された際の措置のような人生を左右する重大事、学校の校則や授業方法、条例や法律の制定のような社会全体に関わるものまであらゆる領域に及ぶ。
第2項は「聴かれる権利」を規定している。特に司法上及び行政上の手続きにおいては、自分の生活に重大な影響を及ぼす恐れがあるため、「聴かれる権利」の保障をおとなに義務づけている。司法手続としては、被疑者となった子どもは少年審判や措置決定の前に意見を聴かれる権利がある。行政上の手続きとしては、例えば虐待で保護された際に、児童相談所による措置決定の前に意見を聞かれる権利がある。就学にあたって、どの学校や学級に就学するのかは障害児にとって重大な問題である。高校での退学・停学などの懲戒の前に、また両親の離婚の際にどちらの親と生活するのかを決める前にも、子どもの意見を聴き、尊重しなければならないのである。
司法上・行政上の手続きだけでなく、子どもに関わるあらゆる決定の前には、必ず子どもの意見を聴き、尊重することがおとなの責務である。なぜなら、おとなから説明を受け、意見を聴かれる機会がなければ、何が決められようとしているのか、そのことは自分にどのような関わりがあるのか、どのような選択肢があるのか、子どもには分からないからである。おとなの側から子どもに意見を聴く機会を設定しなければ、子どもの意見表明権は絵に描いた餅になってしまう。
そして、子どもが意見を表明する際には、決めようとしている事柄に関して、理解できる言葉で情報を提供し、意見をまとめ伝えるのを支援する必要がある。それが子どもアドボカシーの役割なのである。