【 インクルーシブ教育の道 (5)】みんなで「跳んだ」学校行事

【 インクルーシブ教育の道 (5)】みんなで「跳んだ」学校行事
【協賛企画】
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 入学前に、校長先生と行えた「相談」のような「面談」で、たくさんお話をすることができました。それにしても、夫婦で内心ズッコけたのは「ですが3月いっぱいで私は定年退職なんですけどね」という校長先生の一言。長い時間をかけて思いを分かち合い、その温かさが泣けたのに、たちまち不安になりました。仕方がないことと分かっていても、いざ入学式がやってくるまでは、新しい校長先生も、担任の先生のことも分からないのは、配慮が必要な子どもを持つ親としては心配でなりませんでした。

 そんな次男の最初の担任の先生は若い男性でした。これは私たちの勝手な想像ですが、「学校側が私たちの気持ちをくんでくれた!」と思ったのは、支援学級の経験もある先生だったこと。入学後、早々に面談をしてくださり、先生は「授業中楽しく教室にいられるように」と言って手づくりの教材を用意してくれました。大切な小学校の入り口から「学校は楽しい」という次男の気持ちまでつくってくださったのです。

 「折を見て面談」の習慣は今もずっと続いています。先生方との面談は担任の先生のほか、ほかのクラスの先生、学年主任の先生、教頭先生とズラリ。皆さまと同時に情報を共有できることで、「困りごと」を多く持つ次男のサポート体制をつくっていただくことができました。何よりこれは、私たちが発案したことではなく、学校側から提案していただけた、ありがたい場です。

 面談は主に「大きな学校行事」の前に設定されました。例えば「プール」や「遠足」や「運動会」などです。

 1年生での最大の課題は「まだオムツが取れていない」ことでした。トイレは、担任の先生が決めた時間で対応してくれましたが、「オムツが取れていないとプールは厳しい」という結論に至り、「それでもプール遊びはさせてあげたい」という先生の熱意から「プールサイドに小さなプールを用意する」ことになりました。次男専用プールです。

 遠足では、「長距離を歩く」行程があることに、みんなで頭を悩ませました。するとある先生が「目立たないようにバスに乗って行きませんか」と提案。基本的には「クラスの子どもたちと同じことを」と希望する私たちの気持ちは理解しつつ、みんなと同じように歩かせたら時間がかかり、次男だけ遊ぶ時間が少なくなるのはかわいそうだというところまで考えてくださったのです。もし、他の子どもたちから「ずるい」と言われたら「今と同じことを言うので大丈夫です。みんなも遊びたいはずですから」とおっしゃる先生の表情は、心でウインクしているようにも感じました。

 一つ一つ、学校行事というハードルがやって来るたびに、先生方と横並びになって、一丸となってみんなで「跳んだ」日々。その先に見えたのは、最高の景色でした。

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