(鉄筆)7月24日は……

(鉄筆)7月24日は……
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7月24日は「スポーツの日」であり、本来は東京オリンピックの開会式であった。再び増加の傾向を見せている新型コロナウイルス感染者数が連日報道される一方で、来年7月23日に開催される開会式までのカウントダウン用電光掲示板の数字がむなしく時を刻んでいた。来年の開催も危ぶむ声が聞こえ始める中、BSテレビで映画「東京オリンピック」(監督・市川崑)が放送されていた。懐かしい名選手や名場面が次々と映し出され、56年前の世界にタイムスリップしたかのような錯覚を起こさせる。前半の圧巻は開会式。今放送中の朝ドラの主人公のモデルである古関裕而が作曲した「オリンピック・マーチ」にのって行進する日本選手団の表情は、まさに戦後日本の復興を象徴するかのようでもある。映像はその直後一人の聖火ランナーにスポットを当てる。弱冠19歳の若者、当時早稲田大学1年生の坂井義則である。彼がこの晴れ舞台の聖火ランナーに選ばれたいきさつについては『東京五輪1964』(佐藤次郎著、文藝春秋)に詳しい。メイン会場の国立競技場のゲート前で聖火を受け取った後の指示をする人間がいなかったこと、坂井自身が会場から聞こえてくる鼓笛隊の音でセレモニーが終わっていないことを判断し、終わるのを待って入場したことはこの著書で初めて知った。同書で坂井は言っている。「次世代の子供たちがじかにそれを見れば、間違いなく多くのものを得るでしょう」。来年7月23日は梅雨明けの晴れ渡る青空のもとで目を輝かせた子供たちの姿が見られることを切に願う。

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