9月は各省庁による次年度予算の概算要求作成の時期。7月の閣議で麻生太郎財務相から概算要求は対前年度と同額とするようにとの指示があった。コロナ対策で未曽有の財政支出が行われている今年の財政事情を考えればやむなしと理解はする。8月4日の会見で萩生田光一文科相は少人数学級の実現に向けて、教員の確保など来年度から段階的に実施するための検討を「今までとはスピード感を変えて」行うことを明言した。何か確信があってのことなのであろう。これまでも文科省は教職員の定数改善において財務省の徹底抗戦を受け「撤退」している。児童生徒数の自然減によって現在の教員数で十分少人数学級は実現できる、少人数学級の方が学力は向上するという根拠がないなど…。文科相の中長期構想がどのようなものか分からないが、少なくとも前述の財務省の主張への反論と以下の問題への見解は明確にしておいてほしいものだ。最近の若者の教員離れ現象の原因ともされ、TALISなどの調査で指摘された日本の教員の給与水準の低さと過酷ともいえる労働時間への対策、その一因ともなっている「主体的・対話的で深い学び」の授業準備で要する授業外時間の勤務時間内での確保、同じく近年増加する外国人児童生徒や発達障害児童生徒への相談支援体制と教員の負担の問題、何より義務教育標準法の改正への具体的段取りなどである。同大臣の好きな言葉は「ONE FOR ALL, ALL FOR ONE」だそうだ。教員も好んで使う言葉である。ここが正念場だ。