近年、心理検査(主に知能検査)を実施する機関が増え、受検者数も増加しているが、アフターフォローを含めた検査結果の活用という意味ではまだ十分ではないのが実態である。特に、検査結果のフィードバックをどのように行うかは、熟練した検査者でも常に試行錯誤しながら検討しているのが現状だ。
知能検査は、子供がより良い学校生活や社会生活を送るために受けるものである。検査結果は本人のものであるという観点に立つと、フィードバックは子供の支援を助けるものでなければならない。検査者だけが結果を正しく理解していても支援にはつながらず、保護者や教師、ときには子供本人に「誤解なく正確に」「役に立つように」検査結果を伝え、役立ててもらうことが重要となる。
本書は、知能検査のフィードバックについてその理念・倫理から報告書の書き方、専門用語の説明方法、面接での留意点までまとめたものである。特にWISC―4.やKABC―2.などの認知・知能・学習に関する検査を中心に、幼児期から青年期までの児童生徒に対する実際のフィードバック面談やコンサルテーションの事例を紹介している。
本書の狙いは、心理検査のフィードバックを「子供の自立と社会参加」に役立つものにしていくことだ。事例をヒントに、ぜひ子供の発達段階に応じた柔軟なフィードバックの在り方を考え、工夫する助けにしてもらいたい。