(鉄筆)東京・渋谷で女子中学生が……

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 9月は不登校や家出、さらには自殺に関する数値が増える季節である。そんな折、8月20日に東京・渋谷で女子中学生が路上を歩いていた親子を包丁で切りつける事件が発生した。現時点での警察情報によれば、当該生徒は嫌っている母親の性格と自分が似ていることに気付き母親を殺す予行演習のつもりで犯行に及んだ模様だ。少女は「死刑になりたい」とも話しているという。

 これらは、大阪の心療クリニックや小田急線電車内で起きた無差別刺傷事件に相通じるものがある。他者を巻き添えにして殺害し自分も死のうとする「拡大自殺」である。

 拡大自殺の要因について心理学者の意見を整理すると、自己愛性パーソナリティ障害や反社会性パーソナリティ障害が大きく影響している。これら障害のある人間は、長期の欲求不満や家族関係・人間関係の悩みを抱えていることが多い。その結果、孤立感・絶望感に襲われ自暴自棄になり社会への不満を理由に社会全体に復讐するといった経過をたどる。

 こうした状況が大人だけでなく中学生にまで広がった背景は何だろうか。筑波大学の原田隆之教授は、SNSの普及で容易に他人と比較できる環境が生まれたこと、自分の境遇を他人のせいにする「他責」の傾向が社会全体にあることを指摘する。

 SNSは今や子供から高齢者まで世界中の人間が愛用している。そのことが知らぬ間に人間の心をむしばんでいる。原田教授の言うように、犯人追及だけではなく社会がどうしてこうなったか根本から考えていく時期に来ているのではないか。

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