近年、保育現場では“保育の質の向上”が掲げられており、子供を中心に子供の視点から保育を考える「子ども主体」が重要視されるようになった。本書では子供、保護者、保育者の3つの立場を意識しながら、子ども主体を実践した園行事の事例を紹介する。
冒頭から「四季の移り変わりを実感したり、自然の恵みなどに感謝する機会にもなるでしょう」と開催する意味だけでなく、「行事を作っていく子どもたちの様子のプロセスが、写真記録(ドキュメンテーション)などで保護者に伝わっていくことが、重要な役割をなすことになるのです」と保護者との信頼の築き方に言及。園行事に関する理解を再確認できる。その後は、運動会や七夕、デイキャンプなど、多種多様な園行事における秀逸な事例が並ぶ。0~5歳児の各年齢での留意点はもちろん、準備の段階から当日までの流れも詳細に示しており丁寧である。
写真も多く載っているためイメージしやすい。ただそれ以上に、笑顔で園行事に参加する子供たちの写真が何とも印象的。子供に“やらせる”のではなく、ついつい主体的に取り組みたくなる園行事の魅力が十二分に伝わる。さらには、番外編として保護者主体の懇談会もまとめられており、非常に多角的だ。コロナ禍になって園行事の廃止・縮小化を選択せざるを得ない動きが顕著だが、園行事がもたらす影響力は大きい。コロナ禍だからこそ園行事を見直す機会を与える。